近年、微生物菌叢の集団形成や社会性に関する理解が飛躍的に進み、菌叢の機能創発や制御による応用展開が可能になりつつある。例えば、環境微生物菌叢の機能創発や制御による様々な物質の分解や再利用、食糧増産への展開、あるいは生態系の維持が進められようとしている。また、我々の腸内細菌叢に関する知見も飛躍的に深まっており、その制御による健康増進や癌等の疾患治療の可能性が高まっている。一方、合成バイオ×デジタル×ロボティクス技術を活用することで、革新的な新機能を持った微生物を創製することが迅速にできる様になってきている。人工的な酵素遺伝子を導入した人工代謝経路を実装した微生物により様々な物質生産が可能となりつつある。従来微生物が作りえないと考えられていたような化合物の合成も可能になりつつある。さらには、菌叢の機能創発がレアメタル資源回収やリサイクルに役立ち、半導体結晶合成も期待される。この様に、微生物への革新的な新機能付与や菌叢の機能創発・制御により、SDGs達成に向けた様々な社会課題解決の可能性が高まっている。本講演会では、こうした点に関しての現状や将来展望に関して、日本を代表する6名の研究者に講演をいただく。

  • 講演内容:

「腸内環境の制御による新たな疾患予防・治療基盤技術の創出」
 ……福田 真嗣(慶應義塾大学先端生命科学研究所)

「微生物は集団になり社会性を創発する~微生物も群れて会話する~」
 ……野村 暢彦(筑波大学生命環境系)

「細菌でレアメタルを集める!」
 ……岡村 好子(日本学術会議連携会員、広島大学)

「H’OME~身近な微生物と共に生きるための古くて新しい住まい方」
 ……藤吉 奏(広島大学 学術・社会連携室)

「合成生物学×ポリマー科学=GX ~カネカ生分解性ポリマーGreen Planetの挑戦~」
 ……佐藤 俊輔(株式会社カネカ バイオテクノロジー研究所)

「Bio Revolution:バイオ・デジタル・ロボティクス融合 のインパクト」
 ……近藤 昭彦(日本学術会議連携会員、神戸大学)

パネルディスカッション「これからの応用微生物学」
 

  • 問合せ先:
    日本学術会議農芸化学分科会シンポジウム事務局
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