Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – 安全教育

  • 私個人の意見として、実践も必要ですが学生さんは試験勉強は得意なので、上記の資格や毒物劇物取扱責任者などの資格取得の試験勉強などは良い教育方法と思います。(危険物取扱責任者は甲種でなければ意味がありません)
     
  • 皆さんは、研究室での安全教育はいかがされていますか?私は、今回の電討を編集して研究室の学生への教訓にしようと思っていますが、体験談 (自分のも含めて) を話してやるのが一番、効果的な気がします。以前いた学校で、有機化学実験の際、いくら注意しても白衣を着ない学生がいたのですが、強酸がジャージにかかり、ボロボロになってしまいました。幸い、身体は無事でした。翌年から、その話をすると全員、白衣を着るようになりました。研究室での個別の指導は、体験談などでも良いのでしょうが、学生実験も含めた大学教育のなかでのいわゆる安全教育は、難しい面があるように思います。個人的な例でも学科としての例でも結構ですので安全教育の例を btf の中で紹介していただければ幸いです。
     
  • この世の中には連日のように事故が起きています。我々は常に危険と背中合わせの生活をしています。まして実験室の中には危険な試薬、装置がたくさんあり、それぞれについて注意が必要です。比較的マニュアル化し易い、例えばオートクレーブのようなものでさえ、何度で開ければ絶対安全 (正しい又は誤り)、ということはありえません。マニュアル通りにやって事故が起きた場合の責任は、マニュアルを書いた人も取りたくないでしょうから、逃げ道を作っておくでしょう。マニュアルは、あっても読まないのが人の常、失敗談の方が説得力があります。
     
  • 大学では安全教育というのをしっかりやっていないのが現実のように思えます。私が某化学メーカーに勤めた時の話ですが、研究所に配属になると、とにかく安全についてしっかりと教え込まれました。地震や火災時の対処の仕方から日々使っている試薬の危険性まで色々と教えられました。ヘキサン蒸気は静電気の火花でも着火することを実験してみて体験しましたし、個々のヒヤリハット事例を朝礼で紹介しあうようなこともやってました。保護具 (保護メガネや手袋等々) をつける習慣は今でも身に付いています。白衣の話が出ていましたが、やはり実際にそういう目にあってみないと理解できないのが現状でしょう。
     
  • 安全教育には、実験室での火災の模擬実験のビデオ等が有効ではないでしょうか?もしなければ、そういうことを研究する機関があるべきですね。
     
  • 体験談を話してやるのが一番効果的」私もそう思います。昨年から私は、学部 4 年生対象の「安全工学序論」なる集中講義で、実験における安全について講義しているのですが、体験談を話している時、学生は本当に集中して聞いてくれています (ただし身近な話題でないとアクビをしています)。正直に白状すると、来年の講義でしゃべる体験談を増やしたくてこの討論会を提案しました。m( _ _;)m まだ始めたばかりでつたない内容ですが、私が講義で工夫したこと(しようとしていること)を書きます。

1.講義を始める前に以下のような心構えを話しています。

(1)プロとしての自覚を持つ
広辞苑によれば、「プロフェッショル:専門的、職業的」となっています。諸君は研究を専門的、職業的に行うわけですから「プロ」なのです。プロには「知らなかったから」、「教えてもらっていないから」、「調べるのがめんどうだから」などの言い訳は通用しません。

(2)自分自身で下調べする。
研究に使用する機器類はプロ用の機器です。アマチュアが使う家庭電化製品とは異なり、いい加減な使い方をしても事故が起こらないような機構になっている保証は全くありません。実験を始める前に、あなた自身が、使用する実験機器や試薬の取扱いについて十分な下調べを行なわなくてはなりません (先輩や先生の使い方が正しいとは限りません)。実験機器を正しく使用し、実験の効率を上げ、精度に注意を払うことは研究者の義務です。

(3)失敗は報告する。
失敗は過失ですが、失敗を放置したり報告を怠るのは故意であり許されません。また、関係者に危害が及ぶのを知りながら危険な状態を放置するのは立派な犯罪行為です。

2.テキストに読んでもらえる工夫をする

(1)具体的な事例とその理由を載せる
「こうしてはいけない」だけではなく、「こうしないとこう言う事故を起こす」、「そのメカニズムはこれこれだ」というように、事故の実例とそれが起こる理由を具体的に解説する。これは冒頭に述べた通り効果的でした。

(2)「べからず」だけでなく、実験を失敗せず効率良く行うコツも載せる。
テキストには、安全に実験を行うための注意事項と、実験機器の寿命を縮めないために必要な注意事項だけでなく、実験を効率良く行い、精度を保つためのコツも載せました。「べからず」は対岸の火事と感じても、実験のコツや実験を失敗する理由も載せると直接自分の損得にかかわるので、狙い通りテキストを良く読んでくれました。
 

  • 企業にいたとき研究所だけでなく、工場などでおきた事故やヒヤリハットは、以下の内容でA4一枚のレポートにまとめられて

1. 起こった事例(イラストで分かりやすく)
2. 考えられる原因
3. 考えうる対策

実験室単位で配布、掲示され、特に、重大と考えられるものは事務長から各所属長を通じて口頭で伝えられました。起きた事故やヒヤリハットは、その場で注意するのも必要ですが、原因などをはっきりさせた上で、週に一度のゼミの前などで報告、注意するのが望ましいと考えます。口頭よりも紙に書いて分かりやすい形で掲示するのもいいと思います。

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – その他

  • 某大型プロジェクトがらみの装置を、操作を習熟していない学生さんが終夜運転。帰宅後、火が出て消防車出動。ボヤで済みましたが原因は装置の設定ミス。研究に用いる機器はプロが使用することを前提にしており、家庭電器製品のようにフェールセーフになっていないものが多いことを忘れてはなりません。
     
  • 私が学部4年の時、廊下から「バシュ、キーーーーン」と言う大音響がしました。廊下に出てみると、窒素ボンベが白く霜をかぶっていました。ボンベは未使用で、レギュレーターも付けていませんでしたが、残圧はゼロでした。ボンベのキャップが突然壊れて一気に吹き出し、断熱膨張で冷えて霜をかぶったと考えられます。エレベーターや換気の悪い部屋で起こっていれば酸欠死亡事故になっていたかも知れません。エレベーターにボンベと同乗するのはやめましょう。液体窒素と同乗した時も、もし停電でエレベーターが止まったら酸欠になります。(確率は低いがロシアンルーレットと同じです。)
     
  • 名前を忘れましたが、水銀の入ったU字管と細い管の組み合わせで流速を計る装置を使って、測定系を組み立てていました。足らない部品があることに気付き、別の部屋に取りに行く際に、留学生に「触るな」と言ったら、「はい」と言ったので、安心して部品を取りに行きました。帰ってくると、部屋中が、美しい銀世界と化していました。見た人の話によると、7気圧全開でかけたらしく、銀色の煙が飛び出したそうです。
     
  • まだガラスのシャーレを使っていた頃ですが、コンタミが異常増加して、実験にならなくなりました。原因を調べたところ、「オートクレーブが120℃ 10分で殺菌できるなら、150℃の乾熱滅菌器なら 10分で滅菌できていないはずは無い」と思い込んでいた人がいました。
     
  • FPLCを駄目にしてしまった例です。大学の共通施設内にある共通のアマ ************* 社(長い。。)の FPLCで93年にMonoQカラムを使っていたラボが、利用終了後に、バッファー置換をせず、Tris-EDTAとNaClの入ったバッファーを放置していました。99年に利用を希望して気付いたのですが、バッファータンクには、きれいな塩の単結晶(2.5 cm X 2.5 cm)が複数できていました。システムを利用するためにポンプを修理、UVメータ交換をして高額な投資が必要となりました。(できるだけのことはして、修復しようとしましたが無理でした。)

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – UV(紫外線ランプ)

  • 手のひらサイズのUVボックスの上で、ゲルの切り出しを裸眼でやってしまいました。時間にして、10分ぐらいだったのですが数時間後、眼に異物感と霧視が・・・その後、徐々に眼の痛みが出てきて、視界はまるで磨りガラスのようになりました。翌日はほとんど物が見えなくなり、3日ぐらい部屋に缶詰状態でした。みなさんくれぐれも、UVには気をつけましょう。手のひらサイズだからと思って油断した私が馬鹿でした。(^^;)
     
  • A君は蛍光灯とUVランプが同時についていたことに気付かず、クリーンベンチで長時間作業をしましたが、翌日自分の手首から先が日焼けしているので大変理解に苦しみました。色白のB子さんはゴーグルで目を保護してアガロースゲルからDNAの切り出し作業をしましたが、翌朝自分の目の周り以外が赤くなっているので電車に乗るのも恥ずかしく、何らかの病気になったと一人で悩みました。その他、昼間に裸眼でUVランプを見て、夜になってから目を開けられないほどの痛みに襲われた人を2名知っています。幸いなことに回復後は正常でした。
     
  • UVボックスのランプが切れたので、出入りの業者に、「おっちゃん、20WのUVランプ1個」と頼んで、交換しました。次の日の午前中は、全員目医者に行ってお休みで、昼過ぎにやってきた人達の顔は、まるで、ハワイや沖縄に行って来たかのようでした。短波長のランプを付けてしまったのが原因です。教訓:UVランプの交換は、W数だけでなく型番(波長)を確認しましょう。

 

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第4回電子討論会「研究における事故」 – オートクレーブ

  • 私が4年生の時,まだ熱いオートクレーブを開けて中をのぞくと、フラスコ内から寒天培地が私の顔をめがけて飛んできました。若かったので、ボールをよけるように顔をそらして助かりましたが、天井を汚しました。今では学生にしつこいくらいに言っています「Xリットルのフラスコには0.5Xリットル以上の培地を入れるな」と。
     
  • 私の経験では、90℃以下まで、さまして開けると突沸しないようです。
     
  • 後輩がオートクレーブから寒天培地を取り出そうとしたところ、突沸して手にはめていた軍手にかかり、脱ぐのに手間取り2度の火傷を負いました。別の後輩が消泡剤を入れたフラスコを取り出す際、突沸して栓が飛び、やはり火傷しました。何れの場合も90℃まで下がるのを待ってからオートクレーブから出した場合です。カマの温度(厳密には温度センサーの位置の温度)が90℃を切っていても、粘度が高い液体や大量の液体は、100℃以上である場合があり、非常に危険です。90℃で取り出したい場合、突沸しても火傷しない体勢で(もちろん突沸の可能性がある溶液の場合80℃くらいまで待つのが正しい)。

 

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – 漏電

  • 前のラボにいた頃、遠心エバポレータから火が出ました。機械が漏電していた模様で減圧制御がおかしかったようです。先輩が電源を入れ、切った後ふたたび入れたところで大きな音と共に火柱が立ちました。(電源を入切するのは、マナーに欠けているとも思いますが。)しかし、この原因には純水製造装置が漏電していたためであることが判明しました。(同じ所から電源をとっていた。)(発火したのは、、遠心エバポレータの方なのです。)
     
  • オートクレーブが漏電していて、それに気づかずに中のものを取りだそうとして手を入れたとたん、激しく感電し、しびれてしまい、手を抜くことが出来なくなってしまいました。もちろんしゃべることもできないので助けを呼ぶわけにも行かず、そのまましびれるままになって、「このまま死んじゃうのかな・・・」と記憶が飛びかかった頃 (とはいっても、ものの1分弱だったと思う)、たまたま通りかかった同僚にゴム手袋をつけて助けてもらい事なきを得ました。それ以来、オートクレーブに手を突っ込むときは、縁をさわって漏電していないことを確かめる癖がついてしまいました。
     
  • 昔、恒温水槽による感電なら経験があります。テスターで電圧を計ってみたら数十ボルトでした。手で漏電を確認するより、電気的に確認される事をお勧めします。
     
  • 以前いたラボで、5Lジャーファーメンタが漏電していたことがありました。このときは、菌体の挙動がおかしかったことと、他の学生が「ファーメンタがビリビリする」と言い出したことから漏電が発覚し、事故には至りませんでした。pH調製用の塩酸によってかなり内部が腐食していたので、これが原因だったのではないかと思います。
    それから、4回生がSDS-PAGEのサンプルをボイルしているのを忘れて席を外し、水がすべて蒸発し、チューブが燃え出す寸前になっていたことがありました。(電気泳動を流しきってしまうようなうっかり屋さんは特に)火を使うときは気をつけなければいけません。
     
  • 細胞培養のCO2インキュベータで、扉にも電熱線が入っていて加熱しているタイプのもので、扉と本体をつなぐケーブルのコネクタの部分が劣化して過熱、発火した。幸い、すぐ横で作業していた人がいたので、大事には至らなかった。
     
  • ウォーターバスインキュベータ。ヒーターのシールが劣化していたようで漏電。中のサンプルを取ろうとして感電。
     
  • 別の漏電事例。アースつきの3本ピンのプラグがついていたものを無理やり、アースなしの普通のコンセントに差し込んで使用していた。シャーシアースになっていたので、逆差ししたことにより、シャーシに100V がそのままかかった状態になり、感電。
     
  • 漏電事故ではないですが、インキュベーターなど大電流が流れる機器に延長コードを使うと危険ですね。家庭用の延長コードの規格は数 A 程度ですから、15A流れる機器をつなげば発熱し、最悪の場合発火する危険があります。

 

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第4回電子討論会「研究における事故」 – 漏水

  • 3階の実験室で培養を行っていたとき、冷却水を水道の蛇口から直接黒ゴム管で取っていた。黒ゴム管が破れ、一晩中漏れっぱなしになり、1階まで濡らしてしまった。階下のパソコンなどが濡れて結構な被害総額となり、これに懲りて、循環型の冷却装置を買いました。
     
  • 水道の蛇口からイオン交換水作成装置につないでいたプラスチック製の器具が割れて、吹き出した水が、配電盤に直接かかっていました。

     

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – インキュベーター・乾熱器・ストーブ

  • チップとプラスチックチューブを乾燥器で乾かしていたら、誰かが設定温度を上げた。乾燥器内で炭化して、それに気づいた学生がドアを開けたとたんバックファイアー状態になった。
     
  • 研究室に住み着いている学生がいる。旧式のストーブを点けた締め切った部屋の中で寝ているので、一酸化炭素中毒が心配。
     
  • 某社での話です。過熱装置付きスターラーを使用後、ヒーターのスイッチを切り忘れ、何も知らない人が談笑中にスターラーにヒジをついて火傷しました。労災になったので(原因を分析してその対策を報告しなければならない)、「安全は全てに優先する」と言う標語の通り、ヒーターが入らないように改造してしまったそうです。また、ヒーターを入れていないつもりでプラスチックビーカーを載せ、ビーカーが溶けてしまい、異臭で大騒ぎした事例もあります。学生さんが「過熱装置付きスターラーが欲しい」と言ってきますが、私は「ダメ。お湯で溶かす工夫をしなさい。」と答えています。
     
  • 安全装置付き(フロートタイプ)のウォーターバスを長時間運転。フロートが水垢で動かなくなっていたので空焚きになった。幸い空焚きになったのが日中で、異臭で気付いて事なきを得た。帰宅前には必ず水位を確認しましょう。特に、高温に設定する時は時間当たりの蒸発量を測って朝まで持つかどうか確認するぐらいの慎重さが必要です。取扱い説明書には「毎回安全装置の動作を確認せよ」とありますが、そもそも「安全装置の作動=実験の失敗」ですよネ。

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – 遠心機

  • バケット式の低速遠心機で500mL X 4本を遠心したらバランスが合っていなかったためか遠心機が1mくらい吹っ飛んだ。
     
  • 高速遠心機でサンプルのバランスは取ったが、うっかり対称に入れなかったため軸が曲がった。
     
  • スイング型遠心機でガラス遠心管を回したところ、遠心管が長かったため、回転してバケットが傾いた時にアームに引っかかり、破損して中に飛び散ってしまいました。遠心管の長さには制限があると、このときに初めて知りました。この例は別として、通常の事故はバランスをとるという基本的な事で大半防げるのではないでしょうか?
     
  • 現在、海水域の生き物を利用しています。御想像どおり、遠心機の腐食は激しいです。現在、1つの小型遠心機は中が茶色です。つまり、錆による粉が充満して内壁に付いた模様です。(私は使っていません。)また、ローターは現在アンバランスにより軸が曲がり、変な音が周期的に聞こえます。(<かなり危ない)メーカーに来てもらい、見てもらったところ壊れるまで使ってもらわないと対処のしようが無い、と無責任な事をいわれました。こういうものなのでしょうか?
     
  • 昔いた研究室で、ローターがむき出しの遠心機を使っていた時、回転数が上昇するにつれて、いやな気分になったのを覚えています。今でも、目的の回転数に達するまではその場を離れないようにし、異常持には、すぐにスイッチを切るようにしていますが、異常になってからでは間に合わないのでは … と思う時もあります。理想的には、別室で遠隔操作するのがベストでしょうね。音だけは、ちゃんと聞こえるようにして。
     
  • 以前いたラボで超遠心機のうち蓋をつけ忘れ、最高速度でローターが飛び出るという事故がありました。その時は、最大スピードに達するまで近くにいなかったことで、人的被害は出ませんでした。近くにいれば事故を未然に止められたのか、或いは惨事となっていたかは今となっては分かりません。それを思えば近くにいるのも恐いですね。
     
  • 遠心機のローターの装着が不完全のまま回した。回転軸が曲がり修理に約100万円もかかった。
     
  • 遠心機の事故で意外に多いのは遠心管の破損です。古い遠心管や、遠心力に耐えられない使い捨てチューブを使った場合(案外よく見かけます)、割れたり液漏れしたりすることが原因でバランスが崩れてしまうことがあります。この場合は、バランスを合わせる等の操作が正しくても起こります。250mLや500mLの遠心管を使う場合には液漏れなどによってもバランスがかわってしまいます。古い遠心管は使わない方がよいと思います。あと、超遠心用のキャップが老朽化で破損し、恐ろしい音が聞こえてきたことがあります。
     
  • プラスミドを超遠心で精製する際、誤って4℃に設定したため塩化セシウムが析出してバランスが崩れ、軸が曲がった(修理に100万円以上)。冷却機を入れずに超遠心機を回したところ、モーターの発熱と空気との摩擦で温度が上がり、遠心管が溶けた(内容物はもちろん蒸発、ローターは精密検査)。これ以外にも超遠心機のローターが飛ぶ事故(何れもバランスが崩れたのが原因)を3例見聞きしたことがあります。超遠心機の操作はウッカリが即事故につながることを認識しましょう。
     
  • 以下は試料漏れに関するコメントです(ちょっと計算をごまかしてます^^;)。
    遠心分離時には液面は軸に平行になりますが、この時、遠心管の口ぎりぎりの液面をAとします。これより1cm余分に試料を入れ(液面B)、10000 Xgで遠心分離した場合、遠心管の口とフタの境目(*の位置)には10気圧もの水圧がかかります(1 Xg では10mの水柱の圧力が1気圧)。だから試料が洩れるかどうかは、例え柔らかい遠心管であっても指で押してみたぐらいでは分かりません。密閉性が十分確認された遠心管でない場合、試料はAまでにしましょう。Aの液量は、ローターのアングル(シータ)度を調べ、水をいっぱいに入れた遠心管を90-(シータ)度傾けた時に残った水の量です。これ以上入れるとサンプルはロスるし、後始末が大変だし、ろくな事はありません。

遠心機
 

  • うちの研究室では経験してませんが。使用限度を越えてヴァーチカルロータを使用していて、ロータが真っ二つに割れた。B社によると、国内でも事故事例があるそうな。
     
  • ロータの蓋をきちんとしめていなかったので、遠心中に蓋が飛び、チャンバ内およびロータを破損。ロータの締めつけネジを締め忘れて遠心。ロータが飛び、ドライブ、チャンバを破損。バケットをきちんとかけずに遠心。バケットが飛び、ドライブ、チャンバを破損。よくあるのは、規定量以下のサンプル量で遠心。チューブが壊れてロータから取り出せなくなる。
     
  • ローターとフタの間のパッキンが無いと、減速時にフタが緩んで飛ぶ場合があるそうです。多分、加速時は慣性でネジが閉まるが、逆に、減速時は緩むのが原因だと思います。と言いながら、先ほどうちの遠心機のローターを見たら、3個ともパッキンが無い!(あわてて発注しました ^ ^;)
     
  • バケット式のローターのアセンブリー(?)は、例えば 4個掛けるタイプの場合、4個とも同じものを掛けろ(たとえサンプルが2つしかなくても)と取扱い説明書にあります。床置き式のスイング型遠心機(いわゆる clinical fuge)の取説は無くしてしまっていることが多いので、以外と知られていないのでは? 「規定量以下のサンプル量で遠心」ですが、うちでもテフロン製のチューブを何本かだめにしたことがあります。

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – 発ガン性物質の取扱い

エチジウムブロマイド、ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホン酸などの物質は強い発ガン性があり、こぼして放置すれば、例え微量であっても本人はもちろん、関係者全員を長期に渡って危険にさらすことになる。こぼした場合の検出が難しいため、アイソトープよりも危険だと考えるべきである(エチジウムブロマイドは紫外線を当てれば検出できる)。使用する場合は例えば以下のようにアイソトープと同様に(アイソトープ以上に)細心の注意が必要である。また、こぼした場合の対処方法や廃棄する場合の処理方法を熟知していなければならない。なお、使用する試薬、実験目的によって使用手順は異なるので、必ず教官の指導の元で実験を行うこと。

  1. 必ず手袋を着用する。決して素手で扱ってはならない。なお、使用した手袋は汚染しているものとして取扱い、手袋をしたまま不用意に物品に触ってはならない。
     
  2. 作業する実験台には十分な大きさのポリエチレンコートされた濾紙などをひく。
     
  3. 秤量の際は微量でもこぼさないように細心の注意を払う。
     
  4. もし微量でもこぼしたら教官に報告し、直ちに適正かつ十分な中和処理を行うこと。
     
  5. 試薬瓶は新しい透明な袋に入れて口を閉じて保管する。
     
  6. 試薬が入っていた古い袋は(8)に示す方法で廃棄する。
     
  7. 使用した全ての器具(試験管などの容器、チップ、薬さじ、薬包紙)について必ず中和処理を行うこと。
     
  8. 使用した手袋、下にひいた濾紙、試薬を入れていた袋などは人が(関係者だけでなく廃棄業者も含めて)触れることがないようにして廃棄する。例えば手袋をしたまま廃棄したい袋をつかみ、それを包み込むように裏返しに手袋を脱ぎ、口を縛る。さらにこれを別の袋に入れ、口を縛って廃棄する。この際、中にチップなどの先のとがった袋を破る可能性のある物を入れてはならない。チップ類は別途中和処理を行って廃棄する。

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第4回電子討論会「研究における事故」 – 試薬

  • 危険物(火薬)に相当する粉末の反応性を向上させようという目的で、微粉末化を試みた。最初は、超音波ふるい機にておこなったが、静電気発生により粒子がだまになる傾向があったため、ドラフトで乳鉢を使って「手摺り」で粉砕することにした。乳鉢は充分な大きさのものがなく、手短にあった小さいもので、擦ると縁からこぼれかけるような量を「素手」で扱った。ドラフトは防爆型でガラスを閉められるタイプのものであった。しかし、手とうでの一部は素手のままドラフトの中にはいっており、微粉末は静電気を帯びていたためか、あるいは安全量を超えていたかは定かでないが、扱っている本人の意表をついて一瞬にして反応を起こし、乳鉢と乳棒はこなごな。乳棒を支えていた本人の指ならびに眼鏡も一部爆風で吹き飛んだ。就業時間後のことであり、処置が少々遅れた。入院 1 ヶ月半、全治 3 ヶ月。指はもとにもどらず。

(教訓)危険物の知識をもっていても、安全には念をいれて慎重に扱いましょう。大学の研究室も安全教育についての講座は設けていないところが多いですから。その延長で、職場でやられると、労災適用で職場の安全信頼性が低下するので困ります。

  • 某企業の研究所に入りたてのとき試薬棚の整理を任されました。その棚の奥に、かなり昔のしかも未開封の五酸化二リンがあり、それを開封して中身を見ようとしたときにこぼしてしまいました。それを拾ってごみ箱に捨てたところ、いきなり煙が出てきました。さらにたちの悪いことに燃え始めたと思い、水を入れたところすごい音を立てはじめ、実験室をパニックに陥れてしまいました。結局、乾いたガラスのビーカに移し、外に持っていき研究所の裏の土の中に埋めまして一件落着となりました。五酸化二リンは水と反応することを知らない故におきた事故でした。
     
  • 昔々、大掃除の時、ホコリをかぶった古いデシケーターを学生さんが流しで洗おうとしていました。まさに蛇口をひねろうとしている時に気付いて大声で止めました。デシケーターの内容物(白い粉末で表面は溶けている)を少量スパテラで取って水につけたら激しく反応しました。デシケーターの乾燥剤(五酸化二リン、生石灰、濃硫酸etc.)は水と激しく反応します。シリカゲルでさえ水をかけると弾けて危険です。
     
  • 過酸化水素水を密栓して冷蔵庫に保存していたところ、容器が爆発して過酸化水素水が周囲に撒き散らされた。
    過酸化水素の容器は小さな穴が開いていますね。安全対策のため必須なんでしょうが、家庭用オキシフルのフタには穴がありません(と思う・・)。30%の試薬は危なくて、3%(多分)の家庭用なら大丈夫なんでしょうか??。3%でも500mLの過酸化水素から約5L の酸素が出ますが・・・。
     
  • プラスミド精製で共通の超遠心機を使おうとしたところ、シーラーやキャップの所々に赤っぽいものがついていました。UVランプで照らして見ると遠心機のチャンバーも含めてそこら中エチブロで汚染していました。ハンディのUVランプを学科の共通費で購入して遠心機の横に常備し、使用前後の汚染検査と、汚染発見時の教官への報告を義務付けました。
     
  • 「私はエチブロを触って癌になりました」という話を聞きませんし、「痛い話」でもないので迫力に欠けますが、安全教育の参考になるかと思いましたので投稿します。エチジウムブロマイドを漂白剤で処理して捨てるという指導がかなり多いと思いますが、漂白剤による分解産物はエチジウムブロマイドよりもさらに「変異原性」が高いという報告があります(Trends Biochem Sci 1994 Jun;19(6): 257-258)。
     
  • 第1回の電子討論会でも話題になりましたね([btf 1026] あたりをご参照下さい)。その後、私の専攻では他の先生方と話し合って、

Molecular Cloning 第2版 E8に記載されている過マンガン酸カリウムなどによる酸化処理も完全ではない。そこで、ゲル染色液などの希薄な溶液、平衡密度勾配遠心に用いた濃厚な溶液は、共に含ハロゲン廃液として専門業者に処理を委託するのが最も無難だと思われる。なお、希薄な廃液の場合、活性炭あるいはAmberlite XAD-16に吸着させて処理する方法(Molecular Cloning 第2版 E9 参照)もあるが、使用した活性炭、Amberlite XAD-16を適切に処分しなければならない。

と言うことにしています。また、以下のように指導しています。

  • エチジウムブロマイドについては、処理方法もさることながら秤量の方法も問題になります。粉末の場合は誤って吸入してしまうことのないように注意が必要です。
    酵素標識抗体法の基質に使うDABについても発がん性が指摘されていますが、最近では便利で安全な錠剤タイプのエチジウムブロマイドやDABが市販されています。うちは秤量してくれる人がいるからと言って、ドラフトも使わずにDABを秤量させる人がいるようなのでちょっと怖いですね。エチジウムブロマイドや DAB 廃液処理用のフィルタも雑誌広告などでよく目にします。
    いずれも高価につくのかも知れませんが、安全と引き換えと考えればこういった便利なものを使用するのも手かも知れません。
     
  • 吸入するとコワイといえば。SDSなども、粉末を吸入すると難治性の気管支炎などになるとの話がありますが、あまり気にしないで盛大に舞上げながら秤量する人もいたりしますね。パラホルムアルデヒドの粉末や、酢酸ウランの粉末も同様。別のラボに遊びに行って気になったのが、ベリリウム。無知なのか、お茶してる人達の横で平気でバリバリ秤量。さすがに後で気になったのでヤンワリと指摘すると、「え、毒だったの!」
     
  • それは私です^^; SD Sを秤量している最中に鼻血が出ました。
     
  • 私も SDS の秤量の際、あまり気にしないでスパテルも使わないでポリの試薬びんから量り取っていました。今になって思えば、結構咳き込むときに止まらなくなったりするのはそのせいかもしれません。SDS-PAGE を日常的にやっていた関係で、アクリルアミド毒にやられたらしく、左手の親指の表側の感覚がちょっと鈍くなってしまいました。
     
  • フッ化水素酸でガラスを溶かしていて、誤って自分の手にかけてしまった。
     
  • ファルコンチューブでフェノールの水和をしていたところ、チューブが壊れ、着衣の上からフェノールを被ってしまった。
     
  • フェノール抽出の時、ボルテックスで攪拌したらフタがはずれ、飛び散ったフェノールで火傷を負った。幸い軽傷で済みましたが、目に入っていれば失明していたかも知れません。ボルテックス使用時は保護メガネを着用しましょう。特に、フェノール抽出時は手袋も着用しましょう。
     
  • 当時学部生だった私は、電気泳動用のゲルを作っている先輩の横で、フェノール溶液を使っていました。パスツールピペットでフェノール溶液を吸い込み、勢いよく試薬瓶から抜き出したところ、パキッとパスツールピペットの先が折れてしまいました。「しまった」と思うのと横の先輩が「い、痛い」と言うのが同時でした。そうです、ゲルの状態を見るため実験台と同じ高さに目線をおいていた先輩の顔にフェノールをかけてしまったのでした。保護メガネを着用していなかったので一歩間違うと非常に危険な状態でした。顔に黒っぽい火傷のような痕がしばらくついていましたが、数週間後に顔を洗っているときにポロッとはげ落ち、その下は綺麗に再生していました。それ以来、私は保護具着用に異常なくらいこだわっています(K 先輩、ご免なさい)。危険物を使用するときには必ず保護具はつける、また危険物を使っている横での作業は十分気をつけるましょう。
     
  • 某大学の化学実験でのことですが、ある学生さんが目にアルカリ、(たぶん1M 程度の NaOH)を入れてしまいました。安全メガネをしていなかったのも問題ですが、その後、急いで目の洗浄機(よく小学校のプールについているもの)で目を思いっきり洗浄した後、病院に行きましたら、網膜が剥離していたそうで、数週間、入院したそうです。洗浄機を使っていなかったら、どうなったかは定かではありませんが、目に何か入った場合は、洗面器様なものに水をため、目をパチクリが基本の様です。
     
  • あと、他大学でもあるかと思いますが、液体窒素でものを凍らせるとき、軍手をし、物をもっていましたら、ひどい凍傷になった例があります。本人曰わく、少し我慢していたら痛くなくなったそうです。液体窒素をはじく手袋を付けるか、あるいはまだ素手のほうがましだったかもしれませんが、わたしは、-80℃の冷凍庫で固めるのが安全な様な気がします。
     
  • 他大学に移動された先生の廃液を院生と共に処分していて(誰もやらないのでボランティアでやったのですが)、ドラフト内で廃液タンクに廃液を移していたら突然、発熱し気泡まで出てきて、あわゆく爆発か突沸かと言う感じになりました。院生は避難させ、自分は廃液タンクの外側から水をかけて冷却し何とか事なきを得ました。翌日、タンクの中身は固体になっていました。廃液の成分表示がおおざっぱであったことと微量成分は全く不明であったことが原因です。正体不明の廃液などの取り扱いは、要注意です。(当たり前のことですが……)

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – 溶媒~その後の議論

  • K: 以前の電子討論会で、うちではフタ付きのプラスチック容器を使っています。Sigmaなどの試薬瓶が入ってくる容器です。フタをした時の密閉性が良いので、エタノールを入れたまま保管できて便利です。一度火が入ったことがありますが、フタをしてすぐ消火できました(容器の口が少し溶けたので交換しました)。と投稿しましたが、ある方から、フタをして消そうとしたが、容器がプラスチック製だったので熱で変形し、消火できなかった事例があると教えて頂きました。この事例では、当事者はフタで消せなかったためパニックになり、結局粉末消火器で消火したそうです(背に腹は代えられませんが、粉まみれになった研究室の状態は想像するのも怖いですね)。Tさんが仰るように、金属製が最も安全です。私の発言を取消してお詫びします。

    カタログを見ると、直径70mm、高さ90mmのステンレス保存容器が安くてよさそうなのですが(KENIS、342-760、980円)、Tさんはどのような容器を購入されたんですか?
     
  • T: 深型キッチンポット(科学機器419-32-20-01)の身だけ使い、中(液量)が見えるように、身の外径90mmのガラスシャーレのフタをして使っています。残った部分の使い道がないので、バラで売ってくれませんかメーカーさん(^^;アルコールを入れるためのステンレス製容器とガラス製フタの組み合わせでも安全ではないので、自己責任で、お使い下さい。中のアルコールに引火した経験は未だ有りません。引火したらフタをするつもりですが、ガラスが割れる可能性もあります。重心は低いですが、容器ごと倒し、アルコールを自分の方に流すのが一番危険です。また、引火しても、他に可燃物がない状態で使うのが一番です。もっといい物が有りましたら教えて下さい。
     
  • S: 話題からそれますが、私は市販のコーンラージ棒を複数用意して、毎回オートクレーブして使っています。市販のものは火炎滅菌に耐えられませんし、(ひびが入り割れる)そのほうが、クロス・コンタミもしにくく、気が楽です。ディスポの製品も有るようです。
     
  • T: 確かに、アルコールを使わないのが一番ですね。本当に必要なのか、他の方法に変えることは出来ないのか考え直してみます。
     
  • K: 仰る通りですね。良く考えてみると、企業に勤務していた時は、軟質ガラス棒の先をバーナーで溶かしてヤットコで少しつぶして斜めにしたもの (歯医者さんが歯の裏見るとき使う鏡のような形をイメージして下さい)を 50本ぐらい作って、オートクレーブで滅菌して使っていました。

♦関連記事:第4回電子討論会「研究における事故」 – 溶媒

 

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – 溶媒

  • 溶媒(ジエチルエーテル)の入った三角フラスコの栓が取れなくなったので、湯せんでガラスを暖めて取ろうとしたところ、栓が飛び、肩から顔にかかった溶媒に引火し大やけどを負った。
     
  • 水溶性の溶媒を流しに流したところ、流れて行った先の排水溝で何かの火が引火し、排水溝のフタが何枚か吹っ飛んだそうです(某社工場長談)。溶媒は回収して適正に処理しましょう。
     
  • ある先輩がエバポレーターで溶媒を循環式アスピレーターで引いて飛ばしていた時、冷却水を流していた水道の栓を誰かが止めてしまったそうです。そのため、溶媒が回収されずにアスピレーター経由で漏れ、湯沸かし器の種火で引火して天井を火が走ったそうです。以来、その先輩は冷却水の蛇口に必ず「触るな」と表示し、こまめに水が流れているか確認しているそうです。
     
  • ある学生さんが核酸抽出用フェノールを溶かそうとして、湯せんにかけたまま忘れてしまいました。空焚きになる寸前、たまたま通りかかった別の学生が気付いて事なきを得ました。以来その学生さんはウォーターバスを使って溶かしているそうです。
     
  • 微生物を培地に塗布するために白金耳をガスバーナーで滅菌しようとしていたのですが、熱した白金耳を誤ってエタノールの入ったビーカーにつけてしまいました。エタノールは引火し、ビーカーは上部のほうが砕け散りながらも、ビーカーの下の方はそのまま形が残り、燃え続けていました。万が一のことを考え急いで消化器を持ってきてから、大きいバケツに水をいっぱいに入れたものを用意しました。大きい鉄製のはさみで引火したエタノールの入ったビーカーをつかみ、水の入ったバケツに静かに入れました。これで無事消化できました。ビーカーが全部砕け散っていたら火の海になるところでした。ここから得られた教訓は、熱した白金耳などをエタノールに絶対につけないこと。
     
  • もし引火しても割れない容器を用い、フタをして消すようにする考え方もあります。
     
  • 恥ずかしい事故(?)ので、名乗れません。クリーンベンチとエタノールの事故で思い出しました。年末の大掃除で、汚れたクリーンベンチ内部を消毒用エタノールで拭き掃除をやっていました。上半身は丸ごとクリーンベンチの中に入れ、エタノールをふんだんに使っていたら… 30分後には完全に酔っぱらっていました。ちゃかしてすみません。失礼しました…
     
  • それより引火しなくてよかったですね。クリーンベンチの中をエタノールでスプレーするのも危険だと思います。エタノールと火は、有機化学系の実験室ではミスマッチですが、微生物系では必需品ですから問題ですね。さっそくステンレス製の容器を買うことにしました。熱でガラスが割れるのは予想してませんでしたので。
     
  • うちではフタ付きのプラスチック容器を使っています。Sigmaなどの試薬瓶が入ってくる容器です。フタをした時の密閉性が良いので、エタノールを入れたまま保管できて便利です。一度火が入ったことがありますが、フタをしてすぐ消火できました(容器の口が少し溶けたので交換しました)。ただし、重心が高くて転倒しやすいので、ガラスシャーレに接着剤で固定して使っています。また、クリーンベンチ内ではバーナーとは出来るだけ離れた位置に置くように指導しています。
    ⇒その後の btf での議論
     
  • 溶媒の瓶を取り落として割れ、ストーブの火で引火して研究室が全焼。貴重な実験材料やデータも全て失われ、何人か卒業が遅れたそうです。溶媒使用時はもちろん、溶媒瓶を「持つ」時も火気厳禁です。

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Published by 若手会 on 20 8月 2018

第4回電子討論会「研究における事故」 – ガラス管の挿入は3本指で持って

学生に事故報告の重要性を理解させ、学生実験中の事故事例を収集分析したところ、事故の65% は切傷であり、その47% はゴム栓にガラス管を挿入する際に起こっていた。

ガラス管の破損はゴム栓の根本だけでなく、根本から5~6cmのところで起こっていた。前者の原因は、挿入時にゴム栓の根本から2cm の所を持っても、小指はゴム栓から約10cm 離れているため、人差し指と親指の5倍の曲げモーメントが発生することが、後者の原因は、挿入時にゴム栓の摩擦に打ち勝つためにガラス管を握りしめると、手のひら (小指の付け根) と親指で支えられたガラス管を中指と薬指で押さえつけることになるのが原因であると分析し、実験でこれらを実証した。この結果をふまえて、ガラス管挿入時には、親指、人差し指、中指の3指で、根本から2cm 以内を持つように指導したところ、事故は激減した。

圓尾勝彦,化学系有機化学実験における事故の分析と安全指導,第2回「学術研究機関における安全」シンポジウム要旨集,pp42-46 (1997)より著者の了解を得て要約。
化学実験の安全指針, 日本化学会編, 丸善 (1999),pp138-141 もご参照下さい。

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Published by 若手会 on 31 7月 2008

第4回電子討論会「研究における事故」 – ガラス

  • 昔々学部生の頃、ちょうど卒論前の2月に徹夜で実験していて、メスピペットを安全ピペッターのゴム球に押し込む際に破損し、左手の指先を切って4針ほど縫うけがをしました。ピペットの出来るだけ端の方をしっかりと3本の指で持って、無理に押し込まないという基本を守らなかったために大変な目に遭いました。^^;)卒論、修論の季節に事故の話をよく聞きます。みなさん、忙しいときほど気をつけましょう。
     
  • 私も昔、これで手を切り病院に行ったことがあります。卒論提出前で心理的にあせっていた事もありますが、石鹸液を塗るという方法をその当時知りませんでした。注射針で指を貫通した事もあり、この時も少しあせっていたような記憶があります。
     
  • 「3本の指で持って」のフォローです。例えば、新版続実験を安全に行うために(化学同人編集部編、化学同人) の8ページには、ガラス管を5本指で握っている挿し絵が載っていますが、私たちは、阪大基礎工学部の圓尾(まるお)先生の報告を参考にして、「ゴム栓(安全ピペッター) にガラス管(ピペット) を挿入する場合、ゴム栓から2cm以内を親指、人差し指、中指の3指で持って挿入する(小指、薬指は使ってはならない)。3指で入らない場合、それは入れてはいけない組合せであることを意味し、ゴム栓の穴を開け直さなければならない。」と指導しています。
     
  • 廃ガラス入れに割れたビンを入れようとして、落ちた衝撃でガラスが飛び散らないように、そっと捨てようと手を入れたら、上向きになったガラスキャピラリが指にささりました。指の内部でガラスが砕け、手術して摘出してもらった事もあります。小型のレントゲンで見ながらの手術でした。傷口を縫う前に(開いた状態で!)、摘出が終わったかどうかを確かめるため、歩いて別のレントゲン室に行きました。ささった時はにぶい痛みで、手術中も局部麻酔で痛みはありませんでしたが、麻酔が切れた後の痛みは、これまで経験したことのないひどいもので、いただいた鎮痛剤をあわてて飲みました。
     
  • 合成サンプルをパスツールピペットで小さなナスフラスコに移しているとき、誤って手に刺してしまいました。もちろんのこと手の中でパスツールは折れてしまいました。十分傷口は洗ってガラス片は出したつもりなのですが、残っていたらしく、後日化膿して腫れ上がって来たため、手術で取り除きました。
    **様と全く同じように、レントゲンを撮りながらの手術となりました。手術が大がかりだったため、整形外科病棟に数日間の入院を余儀なくされ、職場に恥をかいた記憶があります。パスツールみたいな肉薄のガラス器具はいとも簡単に割れるし、傷口の中に残っていても容易には発見できないことが多いので皆さん気をつけて下さい。
     
  • 御同輩がいらっしゃったとは驚きました。実は、さっきは一部話を省略しました。私も手術したのは傷口が直った後です。幸い私の場合、化膿はしませんでしたが、しこりが指からとれず、しこりをさわると少し痛いので、ガラスが残っていると思い大学病院に行ったのです。医者は最初、ガラスはレントゲンに写らないと言っていましたが、何故か写ってくれ、2方向からの撮影で、位置を確定できました。私の場合、日帰りで済んだのは不幸中の幸いだったようですね。
     
  • 僕の場合は手術で取り出したガラス破片が何と、大小取り混ぜて18個もありました。いかに傷口内で粉々に割れていたか判ります。もっと驚いたのは、入院から数年後、手術したところから、医者が取り残した(って、なんちゅう医者や・・・) 破片が自分から皮膚を突き破って出てきたことです。人間には自然に体内の異物を外に出すという機構が備わっているという話しをマンガ(ブラックジャックだったと思う) で読んだことがそのまま実践されたので、「人間ってすごいなあ・・・」と感銘してしまいました。
     
  • ネジ口試験管のネジを閉めすぎてガラスが割れる事はたまにありますが、どのくらいの力以上だと怪我をするか学習したせいか、最近、怪我はありません。もう一歩進んで、どの位以上の力で割れるのか、学習できるといいのですが、焦り気味の時は、手に力が入り過ぎるようでリ。力の入れ加減は、ガスクロのカラムをスパナで締め付ける時にも言えます。ネジを手で締め付けるタイプのものは力の入れすぎは少ないかも知れません。しかし初心者には、ガラスに力がかかる作業をする時は、適当な手袋を着けるように指導すべきでしょう。
     
  • 培養用の2リッターの三角フラスコを洗っているときに、口が欠けているのに気づかず、その部分を握ったため、握りつぶしてしまい、左手の親指を12針縫う怪我をしました。丁度春の年会の前の日で、包帯ぐるぐる巻きの手で発表をしたことを覚えてます。植菌時に綿栓を火炎であぶるため、どうしても肉厚のフラスコはひびが入ることがあるのを忘れていたための怪我でした。
     
  • メジウム瓶にアガロースを入れて電子レンジで溶かし、早く冷やそうとしてフタを閉じて水をかけたところ、割れてガラスの破片がまぶたに刺さりました。
    少しずれていれば失明していたかも知れません(^ ^;) 急冷は禁物です。
     
  • 割れた試験管を試験管立てに立てたままにしていたら、他の試験管を取ろうとした時に指をザックリ切って2針縫いました。割れたガラス器具は直ちに処分しましょう。
     
  • ある先輩は、1Lのビーカーを鷲掴みにしたところ割れ、指の神経を切り、リハビリに1年近くかかったそうです。500mL以上のビーカーは両手で持ちましょう。

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