広島大学 黒田 章夫

2025年9月10日(水)~12日(金)の3日間、広島工業大学三宅の森Nexus21にて第77回日本生物工学会大会が開催されました。大会の参加者数は、事前登録および当日登録を合わせて1,793名(正会員655名、学生会員463名、非会員397名、招待168名、他110名)となりました。またランチョンセミナー、展示、広告、飲料提供、学生のための企業研究セミナーなどにおいて、延べ101社の企業様にご協賛頂きました。多くの方々のご参加と、多くの企業様のご支援に対し、深く感謝申し上げます。残念ながら、初日と3日目は天候が大荒れとなり、一部の式典およびシンポジウムを中止せざるを得ない状況となりました。参加者の皆様には大変なご不便をおかけしましたが、大会実行委員会ならびに学会本部の先生方の冷静かつ迅速なご対応により、混乱を最小限に抑えることができたと考えております。

振り返りますと、大会初日の朝には大雨と雷の影響でJR山陽本線が運行停止となり、午前中に予定していた授賞式・受賞講演は急遽中止となりました。午後には天候も回復し、ランチョンセミナーならびに一般講演を予定通り実施することができました。生物工学奨励賞(江田賞・斎藤賞・照井賞)および生物工学アジア若手賞の受賞講演は、初日午後に3会場に分かれて開催いたしました。一方、生物工学賞・生物工学功績賞・生物工学技術賞の受賞講演については、大会期間中にご講演頂くことができませんでした。

懇親会は、大会初日の一般講演終了後に、広島駅直結のホテルグランヴィア広島に会場を移して開催いたしました。JRの運行が夕方まで復旧しなかったため、開始時刻を少し遅らせての開催となりましたが、約500名の多くの皆様にご参加頂きました。清水浩会長のご挨拶、来賓の長坂康史広島工業大学学長からのご祝辞を頂きました。続いて、広島県の樽酒による鏡開きが行われ、室岡義勝功労会員に乾杯のご発声を頂きました。広島県食品工業センターの皆様に、広島県のお酒の紹介を頂きました。また懇親会の中頃には受賞者の方々にご登壇頂き、参加者と共にお祝いの場を持てたことは、懇親会ならではの温かいひとときとなりました。

広島工業大学三宅の森Nexus21講演会場での写真

懇親会での鏡開き

大会2日目は天候が回復し、シンポジウムならびに一般講演が順調に実施されました。併催された企業展示も引き続き盛況で、多くの参加者が最新の技術や製品情報に触れる機会となりました。前日に実施できなかった授賞式については、代議員会の場にて無事執り行うことができました。また、本大会の恒例となっております韓国のThe Korean Society for Biotechnologyand Bioengineering(KSBB)、台湾のBiotechnology andBiochemical Engineering Society of Taiwan(BEST)との国際シンポジウムは、「Point of Care Testingが支える安全・安心な日常生活」および「AIと情報科学が切り拓く生物工学の未来」の2部構成で開催され、活発な議論が交わされました。夕方には、企業と学生をつなぐ「学生のための企業研究セミナー」がポスター形式で開催されました。企業の研究開発に携わる皆様より、製品開発の面白さや社会実装に向けた課題、仕事の魅力などを率直に語って頂き、参加した学生・若手研究者にとって大変貴重な学びの場となりました。さらに、日本生物工学会と日本分析機器工業会(JAIMA)による「共働ピッチ・ネットワーキング」では、若手研究者と分析機器メーカー技術者との間でニーズとシーズの共有が行われました。その流れを引き継ぐ形で、「若手会総会・交流会」も開催され、いずれの会場も終始活気に満ちた雰囲気の中で幕を閉じました。

生物工学賞の受賞の様子

生物工学賞、生物工学功績賞、生物工学技術賞、生物工学奨励賞(江田賞、斎藤賞、照井賞)、生物工学若手賞、生物工学アジア若手賞受賞者.下段左より、北口、尾島、馬場、木野、本多、赤坂、細川、上段左より、Diah Anggraini Wulandari、Zhiwen Wang、三浦、清水会長、野田、今井(一部敬称略)。

生物工学論文賞受賞者、生物工学学生優秀賞(飛翔賞)受賞者.下段左より、楊箸、中山、友永、戸田、大政、堀江、神谷、上段左より、西澤、西岡、松本、金子、清水会長、井上、田中、森(一部敬称略)。

大会3日目は、再び早朝からの大雨によりJRが運行停止となり、さらに広島工業大学周辺には「避難指示」が発令されました。天候自体は次第に回復傾向にありましたが、「避難指示」が継続している状況下での開催は、広島工業大学にご迷惑をおかけする可能性があることから、午前中に予定していたシンポジウムの開催を見送るという苦渋の決断をいたしました。その後、午前10時前に避難指示が解除されたため、午後からはランチョンセミナーおよび一般講演を再開することができました。度重なる予定変更により、参加者の皆様には大変ご不便をおかけしましたこと、またご準備頂いたシンポジウムを開催できなかったことを、改めて深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんが、該当演題につきましては、要旨公開をもって発表に代えさせて頂くことになっておりますので、ご了承ください。一方で、一般講演につきましては3日間、17会場に分かれて計626件の口頭発表が予定通り実施されました。多くの座長の先生方にご担当頂くとともに、学生優秀賞の審査にもご協力頂きました。また、3日目昼の時間帯に開催されたDE & I企画では、講師によるキャリア形成やワークライフバランスに関する講話とグループワークが行われ、参加者が日頃抱える悩みや疑問をざっくばらんに共有できる場となり、事後アンケートでは非常に高い満足度が示されるなど実りのある企画となりました。

本大会では、従来通り「大会トピックス集」の発行を行いました。プログラム編成時に、発表申込者による説明文をもとに興味深い演題を選出し、要旨提出後には選考委員による投票によってさらに選抜を進め、最終的に30件の演題が採択されました。採択演題については、グラフィカルアブストラクトを含む詳細な記事として執筆頂き、PR Timesを通じてプレスリリースを行いました。トピックス集は500部印刷し、大会期間中に参加者の皆様に配布いたしました。

また、一昨年より開始された学生優秀発表賞制度は本年も実施されました。演題申込時に、指導教員1名あたり2演題までを審査対象として申請頂き、以下の項目〔①理解力(背景理解)、②説明力(講演のわかりやすさ)、③コミュニケーション力(質疑応答)〕に基づき厳正に審査を行いました。その結果、学生最優秀発表賞5件、学生優秀発表賞57件が選出されました。受賞された学生の皆様には心よりお祝い申し上げます。繰り返しになりますが、学生発表314件の審査にご協力頂いた審査員の先生方には、改めて厚く御礼申し上げます。

本大会では、大会実行委員の皆様のみならず、広島工業大学の非会員の先生にも大会スタッフとしてご協力頂きました。また、広島工業大学を中心とした学生アルバイトの皆様にも感謝申し上げます。学会事務局におかれましては、HP作成、メール配信、受付業務など、運営のあらゆる場面で多大なるご協力を賜りましたことにも、厚く御礼申し上げます。大会準備期間を支えて頂きました理事会にも感謝いたします。

最後に、初日のお弁当につきまして、衛生管理上の不備があり、体調を崩された参加者がおられたことをご報告致します。当日は、弁当業者が直接講演会場まで配送しており、当該業者より「自社の温度管理の不備によるものと考えられる」との申告を受けております。当該業者はホテルなども系列に持つ大手企業でもあるのですが、このような事態に至ったことは大会実行委員会として誠に遺憾であり、保健所へも速やかに情報提供を行いました。一方、当該業者からはご迷惑をおかけした皆様への見舞いの意と、再発防止に向けての対策についての報告を受けており、当該業者は真摯に反省されていると理解いたしました。今後このような事態が再び生じることのないよう願うとともに、ご迷惑をおかけした参加者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

本大会は天候による度重なる影響を受け、開催運営上の多くの課題に直面いたしました。地球温暖化に伴い、このような極端な気象が今後も常態化することが懸念されます。今回の経験は、大会運営においても新たなリスク要因が顕在化したことを示していると考えております。今後は、プログラム編成や運営体制においても、一定の柔軟性と余裕を持たせた設計が必要なのかもしれません。来年度の2026(令和8)年度第78回大会は、小西正朗実行委員長(北見工業大学)のもと、北海道大学で開催される予定です。来秋は快適な北海道で無事盛会になることを祈念しております。