木野邦器会長(2017年6月)この度、日本生物工学会会長として選任されました早稲田大学理工学術院の木野邦器でございます。醸造・発酵工業のパイオニアとして世界のバイオ産業を牽引してきた我が国にあって、100年に近い歴史を誇る伝統ある日本生物工学会の会長を拝命致しますことは、誠に光栄なことではありますが、その使命と重責を担うことに身の引き締まる思いがします。高木昌宏、川面克行の両副会長をはじめ、理事、支部長、代議員、そして会員皆様のお力添えをいただきながら、先人達の築いてこられた本会の一層の発展に尽力して参りたいと存じます。

本会は、2011年に飯島元会長のもとで公益法人に移行し、2012年には創立90周年記念事業が原島元会長のもとで成功裏に執り行われ、創立100周年に向けて新たな決意が表明されました。園元元会長は、学会運営体制の強化を図りつつ、今後10年間の行動目標として、1. 財政基盤の確保と健全化、2. 公益事業の明確化と寄付文化の醸成、3. 会員間の交流促進と連携を掲げ、在任中の2年間で具体的な7つの課題を明示して強いリーダーシップを発揮され重点的に取り組まれました。五味前会長は、そのアクションプランを達成すべく各支部との連携を強化されるなど大いに尽力され、とくに懸案であった財政基盤の確保と職員の常勤化を果たされました。これは、今後の学会発展にとって不可欠で重要な成果です。

創立90周年から数えて丁度5年目の折り返しの時期に会長を拝命した私の使命は、前執行部の方針や改革を引き継ぎ、とくに園元元会長が掲げられた行動目標を着実に実践し、創立100周年に向けて本会が大きく飛躍するための基盤をつくることであると考えています。公益法人における学会運営の財政面での安定化を果たすための事業計画や仕組みを作り、その基盤の上に、本会の特徴ある学術研究活動を国際的に展開させ、学術の先進化と社会実装に向けた産学官の新たな連携や取組みを推進し、生物工学の次世代を担う世界で戦える若手人材の育成を進めていきたいと考えています。そのために、行動目標の達成に向けてそれぞれが果たすべき役割と課題をあらためて明確にし、しかも横連携を図れる柔軟性と効率的な展開を目指して、PDCAサイクルを意識した運用を徹底していきたいと考えています。

今世紀は、人口増大に伴う食料問題、地下資源の乱用、炭酸ガス排出増大に伴う環境変動といった地球規模での喫緊の課題が山積しており、私たちは持続可能な社会の確立に向けたさまざまなニーズに対応する必要があります。国連が2015年に持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)として掲げた17の目標のうち、10項目以上でバイオテクノロジーが貢献できるとされています。我が国においても、健康・医療をはじめ、モノつくり技術や環境・エネルギー、農業・食料供給などの面で課題は多く、本会の担うべき役割は大きいと感じています。

ゲノム解析や編集技術、オーミックス研究やビッグデータ処理技術など、合成生物学をはじめ生体情報工学や細胞工学などの分野で著しい技術開発がなされており、それらはさらに革新的なイノベーションを引き起こすと考えられますが、一方で、これからの新たなモノつくり技術において生物工学の可能性が問われています。新たな潮流の中で、本会や生物工学分野にとっては今がチャンスと捉えるべきで、会員の皆様が、夢の実現に向けて知恵と勇気を持って果敢に挑戦できるアクティビティーの高い学会にしていきたいと思っています。

生物工学会誌の巻頭言の見出しである「随縁随意」は、私が和文誌編集委員長であった時に考えた四文字熟語の造語です。特定の専門分野の研究や学術団体であっても、それを維持・推進するのは“人”だと考えています。異なる背景と価値観を持つ多様な年齢層の人々が、生物工学を拠り所として集まり、交流し、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮することで新たな価値の創出やイノベーションが実現するものと考えています。

会員の皆様には、本会をそれぞれのブラッシュアップの場と捉えていただき、一方で、充実感を味わえる学会を目指したいと思っています。個人会員、学生委員、団体会員、賛助会員の皆様におかれましては、あらためて絶大なるご協力とご鞭撻を賜りますよう切にお願い申し上げ、会長就任の挨拶とさせていただきます。

2017年6月
日本生物工学会会長
木野邦器

 

【歴代会長挨拶】

 

【生物工学会誌 巻頭言】

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