【関西支部】第125回醗酵学懇話会~糸状菌の可能性を拓く:天然物探索と発現制御の融合研究~
投稿日: 2025.11.22 最終更新日: 2025.11.25
第125回を迎える醗酵学懇話会を下記の通り開催いたします。今回は、醸造にも利用される微生物である糸状菌に関連する3つの話題をご紹介頂きます。また、工場見学および懇親会も開催致しますので、多数のご参加をお待ちしております。
- 日時: 2026年1月29日(木)14:00~18:30(予定)
《見学会》 12:00~13:00(事前予約制・定員20名)
《講演会》 14:00~16:20
《懇親会》 17:00~18:30
- 場所:
《会場》 大関株式会社(〒663-8227 兵庫県西宮市今津出在家町4番9号)本社工場4階411会議室
- プログラム:
13:30~ 受付
14:00~14:05 開式の辞………蓮沼 誠久(関西支部支部長 / 神戸大学先端バイオ工学研究センター)
14:05~14:45
「土壌分離糸状菌を活用した天然物探索と生合成研究」
………加藤 直樹(摂南大学 農学部 応用生物科学科 応用微生物学研究室)
天然化合物は重要な創薬資源であるが、近年、新規化合物の発見が非常に困難となっており、新たな探索法が模索されている。培地に小分子化合物を添加することで代謝物生産を誘導する手法は、対象微生物の遺伝子組換えを必要とせず、広範な適応が可能であり、有用な探索法の一つとなっている。複数の生合成経路が活性化されることもあるが、基本的に得られる化合物の予測は困難である。一方、二次代謝物生合成酵素の阻害剤を用いれば、中央代謝経路や他の二次代謝に影響を及ぼすことなく、特定の部分構造を有する代謝物を効率的に探索できるはずである。我々はこれまでに、糸状菌の産生するデカリン含有テトラミン酸化合物の生合成経路において働く、分子内Diels-Alder反応を触媒するデカリン合成酵素の阻害剤を同定しており、この阻害剤を用いた新規化合物とその生産菌探索を行っている。本発表では、阻害剤同定から探索法の確立、新規化合物探索について紹介したい。
14:45~15:15
「黄麹菌多核多細胞におけるmRNAの時空間生成制御機構」
………樋口 裕次郎(九州大学 大学院農学研究院 生命機能科学部門 発酵化学研究室)
黄麹菌Aspergillus oryzaeは古来、日本酒、醤油、味噌等の発酵醸造で利用され、また近年では糸状菌の分子細胞生物学研究の良いモデルとなっています。私達は、黄麹菌の多核多細胞において、mRNAがどこで転写、翻訳、輸送制御されているのかという問いに対して研究しております。そこで、生きた細胞でmRNAを可視化するMS2システムを黄麹菌に導入しました。そして、1. 糖化に重要なグルコアミラーゼをコードするglaAのmRNAが、菌糸先端や隔壁近傍の核で特に生成されること、2. 微小管を構成するβ-チューブリンをコードするbtuA mRNAは、どの部位の核でも生成されるが、核分裂時に増加が見られること、3. 小胞体 (ER) におけるシャペロンをコードするbipA mRNAはERストレスに応答して消長が見られること、などを明らかにしてきました。さらに最近では、mRNAの翻訳状態を生細胞解析するSINAPSと呼ばれる系の導入にも成功しており、そうしたデータもお示ししたいと思います。
15:25~15:35 休憩
15:35~16:15
「Aspergillus属糸状菌を用いたタンパク質の高生産化と耐熱性の向上」
………加戸 悠(大関株式会社 総合研究所 バイオサイエンスグループ)
Aspergillus属糸状菌は、高いタンパク質分泌生産能を有し、産業用酵素の製造において広く利用されていきた実績から、多様なタンパク質の生産宿主として注目されている。本講演では、同微生物を用いたタンパク質発現系の概要を紹介するとともに、最近の応用事例として、異種微生物由来の酸化還元酵素の高発現株構築に関する取り組みを報告する。さらに、酵素の産業利用を想定した耐熱化技術にも取り組んでおり、酵素利用の幅を広げる成果を得ている。これらの技術は、酵素タンパク質製造の効率化のみならず、酵素を活用したバイオプロセス開発にも貢献し得るものである。本講演では、Aspergillus属糸状菌によるタンパク質発現の技術的ポイントと、今後のものづくりにおける可能性を展望する。
16:15~16:20 閉会の辞………岡澤 敦司(関西支部副支部長 / 大阪公立大学農学研究科)
17:00~18:30 懇親会(大関株式会社社内食堂)
- 定員: 80名(見学会は20名)
- 参加費: 一般:1,000円(税込) 学生:無料(当日会場受付にてお支払いください。)
- 懇親会会費: 一般:2,000円(税込) 学生:1,000円(税込)(当日会場受付にてお支払いください。)
- 申込み方法: こちらのWebフォームよりお申し込みください。
- 申込締切日: 2026年1月8日(木)正午(定員に達し次第、締め切らせていただきます。)
- 問合せ先:
日本生物工学会 関西支部
企画副委員長 坪井 宏和
E-mail:
会場へのアクセス
《講演会・懇親会会場(大関株式会社)》
阪神今津駅から徒歩約14分
阪神久寿川駅から徒歩約9分
アクセスはこちらをご参照ください