生物工学会誌 第96巻 第6号
稲垣 賢二

『生物工学会誌』(和文誌)を毎号楽しく読ませていただいています。歴代の編集委員長、編集委員の皆様のご尽力に心から敬意を表したいと思います。各号の「特集」はとても面白く、「バイオよもやま話」は為になる話も多いし、「バイオミディア」も興味深い、本当に読みやすく学会員の為になる和文誌です。バイオサイエンス系のいくつかの学会で理事などを務めた経験から、会員への和文誌の無料配布が「学会本部、支部と会員との橋渡し役」として、きわめて重要であると痛感しています。

現在、さまざまな事情により、学会誌の無料配布の停止や、オンラインジャーナル化がトレンドとなっていますが、以前からこれは考えものだと思っています。一例として、日本農芸化学会では、以前『日本農芸化学会誌』と言う名称の学会誌(1924–2004)と現在も継続発行されている『化学と生物』(1962年発刊)という一般啓蒙雑誌の2種類を刊行していました。『日本農芸化学会誌』は会員に無料配布され、『化学と生物』誌は希望者のみ有料配布でした。学会として2種類の毎月発行が負担となり、2誌を統合し、どちらかの刊行をやめる決断が迫られました。評議員会でその話が出たときに、個人的には『日本農芸化学会誌』を残して欲しいと思いましたが、理事会での議論の結果、統合誌として『化学と生物』という名称が残されました。さらに経費削減のため、オンラインジャーナル化(2015年2月から)と会告欄の廃止が決まりました。

またほぼ同じ時期に、日本生化学会でも学会誌『生化学』のオンラインジャーナル化に伴い、会員への無料配布が中止され、会告欄は廃止されました。現在、『生化学』誌の冊子体は、希望者への有料配布となっています。こうした状況を経て現在冊子体として発行されている日本農芸化学会の『化学と生物』誌、日本生化学会の『生化学』誌ともに会告欄はありません。つまり、学会本部から会員への案内はホームページや電子メールが中心で、和文誌にはほとんど掲載されていません。一方、『生物工学会誌』には年次大会やSBJシンポジウムの案内はもちろん、7つある支部からの行事情報も頻繁に掲載されており、学会を大変身近に感じますし、他支部主催の行事に参加するきっかけともなっています。さらに学生の教育にもなるので、是非無料配布をこの先も続けて欲しいと思います。

さて、ここで現在の『生物工学会誌』の素敵なところを見てみてみたいと思います。まず、「カレンダー」を見れば当面の学会、支部の行事が一目で分かりとても便利です。そしてこの「随縁随意」、学会に長く関わってこられた先輩諸氏のさまざまなご意見は、若い会員の傾聴に値すると思います。そして多くの号で「特集」が組まれ、最近の研究動向を知ることができます。

続いて「続・生物工学基礎講座―バイオよもやま話―」、この実験に関わる基礎講座は、本当に研究者や院生学生の為になります。前身の「生物工学基礎講座―バイオよもやま話―」は、学会創立90周年記念事業の一環で書籍化され『生物工学よもやま話―実験の基礎原理から応用まで―』として市販されていますし、学会のホームページ上でも2011年89巻4号–2013年91巻3号分がPDFとして公開されています。日本のバイオテクノロジー技術、研究の進展や一般市民への知識の普及に大きく貢献していると思います。

「バイオミディア」は、さまざまな研究トピックをミニレビュー風にまとめてあり、こちらも参考になります。「バイオ系のキャリアデザイン」は、OG、OBが歩んできた道を振り返るコーナーで、若い読者すなわち院生、学部生のキャリア選択の参考になるので、是非とも読んでいただきたい。各支部回り持ちで担当する「Branch Spirit」、会告欄に相当する「本部だより」等々、こうしてみるとさまざまな企画があり、読み応えもあります。編集委員に積極的に若手、女性や企業会員を登用してきた成果も現れているように思います。

実は小職、昨秋から日本生化学会の編集担当常務理事に就任したので『生化学』誌を担当する立場となりました。『生物工学会誌』の優れた取組みにも学んで、会員の為になる和文誌になるよう努力したいと思います。最後に『生物工学会誌』の益々の発展、充実を祈念して筆を置くことにします。


著者紹介 岡山大学大学院環境生命科学研究科(教授)