2025年度の生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナーは、二部構成で企画をしました。第一部は若手研究者向け、第二部は小中高生向けの企画です。

生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナー2025
第一部:若手研究者企画

第一部は、7月5日(土)13:00〜7月6日(日)13:30に、福岡県福岡市の糸島半島にあるAlba HOTEL&Glamping にて開催されました。おかげさまをもちまして全国から96名の御参加をいただき、4件の招待講演、49件のポスター発表、4件のランチョンセミナーなどを行い、分野と世代を超えた研究者間のネットワーク創出を行いました。

開会式

若手会会長の蟹江先生(近畿大学)からご挨拶いただきました。引き続き、実行委員長の中谷先生(新潟大学)より謝辞および本セミナーの趣旨説明を致しました。

ランチョンセミナー1日目

初日のランチョンセミナーでは、かずさDNA研究所の池田和貴様・島津製作所の高橋秀典様からご講演いただきました。研究内容だけではなく、ご自身のキャリアの中で体験した、他ではなかなか聞けない貴重なお話をしていただきました。

招待講演

アカデミア、企業、ベンチャーキャピタルなど、多様な分野でご活躍される4名の先生方をお招きし、ご講演いただきました。最先端の「研究」はもちろんのこと、その社会実装に向けた「戦略」、ご自身の「キャリアパス」、そして原動力となる「情熱」についてお話しいただき、参加者一同、大いに刺激を受ける時間となりました。

招待講演1『地域と共に歩む 〜本格芋焼酎造りの技術と未来〜』

仲村 憲治 先生(霧島酒造株式会社) 

企業における研究開発の最前線について、霧島酒造の仲村先生にご講演いただきました。先生は大学で博士号を取得後、現職にて焼酎の香味研究などに従事されています。ご講演では、宮崎の豊かな自然に根差した焼酎造りのこだわりや、さつまいも農家の高齢化・病害といった課題に対する「芋テラス」などの先進的な取り組みをご紹介いただきました。特に、焼酎のわずか0.2%に過ぎない香味成分が味わいを決定づけるというお話は大変興味深く、品種ごとの香気成分(金木犀の香りがする「たまあかね」など)を科学的に解明し、新品種「霧島No.8」の開発に繋げた研究開発秘話には、多くの参加者が惹きつけられました。企業での研究の魅力と、地域社会と共に発展していく姿勢を学ぶ貴重な機会となりました。

招待講演2『起業において、なぜ人の繋がり、ネットワークが重要なのか? 〜事業との関連性について〜』

坂本 剛 先生(QBキャピタル合同会社・事業構想大学院大学)

大学発技術の事業化支援で輝かしい実績を持つQBキャピタルの坂本先生に、研究成果を社会に届けるための要諦をお話しいただきました。先生は、大学の産学連携やTLO(技術移転機関)でのご経験を踏まえ、多くの研究が直面する「死の谷」を越えるための鍵として「ネットワーク」の重要性を強調されました。「弱い紐帯の強さ」といったネットワーク理論や、ご自身が支援されたスタートアップの具体例を交えたお話は、説得力に満ちていました。研究者個人の力だけでなく、多様な人々との繋がりがいかに重要であるか、そしてその繋がりが時に予期せぬチャンスを生み出すことを学び、「人との繋がりを大切にしよう」と改めて感じた参加者も多かったのではないでしょうか。

招待講演3『大学で生み出したゲノム編集技術を世界で実用化させる挑戦』

川又 理樹 先生(九州大学生体防御医学研究所・One Genomics, Inc.)

米国でベンチャーを立ち上げられたご経験を持つ川又先生より、基礎研究における「遊び心」がいかにして世界的な発見と事業化に繋がったか、ご自身の体験をもとにご講演いただきました。先生が開発した精密なゲノム編集技術は、当初の設計ミスという「遊びの実験」から着想を得たというエピソードには、会場から驚きの声が上がりました。論文や目的達成のための研究だけでなく、知的好奇心に基づく「本気の遊び」の中からこそ、誰も真似できない独創的な技術が生まれるというメッセージは、若手研究者の心に強く響きました。日々の研究活動に対する向き合い方を考えさせられる、示唆に富んだご講演でした。

招待講演4『臓器再生を目指したバイオ3Dプリンタの開発』

中山 功一 先生(佐賀大学医学部附属再生医学研究センター)

臓器再生を目指したバイオ3Dプリンタ研究の第一人者である中山先生に、その画期的な「剣山(けんざん)法」の開発秘話についてお話しいただきました。従来法の課題を乗り越えるため、細胞自身が持つ接着する力を利用し、微細な針(剣山)に細胞を刺して立体的な組織を作り上げるというユニークな発想の転換には、誰もが舌を巻きました。昆虫標本の針や、ビール瓶を洗浄する機械など、全くの異分野の技術や製品を組み合わせることで困難な壁を突破していった過程は、まさにイノベーションの神髄でした。常識にとらわれない発想力と、それを実現するための探求心、そして異分野連携の重要性を力強く示すご講演でした。

夕食

福岡県の糸島で、白米にたっぷりの魚卵をのせたご飯や、お肉と大根、人参の和え物、エビなどを煮込んだものなどを美味しくいただきました。小鉢に入った魚卵も添えられ、地元の味覚を堪能して英気を養いました。

グループセッション

ブース協賛いただいた企業と参加者の交流の場として、グループセッションを実施いたしました。ハンドアウトやポスターを用い、企業の取り組みや今後の就職先の候補として有意義な意見交換ができました。企業にとっても若手研究者にとっても、貴重な交流機会になったものと期待します。

ポスター発表

49件のポスター発表が実施されました。各ポスター前で激しい議論が飛び交い、濃密な時間を過ごすことができました。「普段の学会で拝見するポスター発表より熱量がすごかったように感じました。」「ビール片手に研究発表できる場は初めてで楽しかったです」などのコメントをいただきました。

懇親会

懇親会には、多くの参加者が集い、盛況のうちに幕を閉じました。会の冒頭では、ご協賛いただいた飲み物で盛大に乾杯が行われ、和やかな雰囲気のなかで交流が始まりました。参加者同士の距離が自然と縮まり、研究や日常について語り合う姿が各所で見受けられました。特に、世代や分野を超えた活発な意見交換が行われるなど、有意義なひとときとなりました。懇親会企画として、生物工学会誌や開催地・糸島にまつわるクイズ大会が催され、笑いや驚きに包まれながら、大いに盛り上がりました。ご協賛いただいた皆様に心より感謝申し上げるとともに、ご参加いただいた皆様にも厚く御礼申し上げます。

学生企画

​​参加者間の交流を深めるために行った企画、題して「リサーチビンゴ」。この企画では、時間をかけないと知り得ないような相手の背景や個性を、ビンゴ形式の対話を通じて楽しく引き出しながら、人とのつながりを深めることを目指しました。研究分野を超えた交流の促進や共同研究のきっかけづくり、若手研究者のネットワーク形成などが期待され、多くの参加者から「楽しく深い対話ができた」や「お互いを知るきっかけになった」との声が寄せられました。

パネルディスカッション :研究留学、生成AI活用術

「研究留学」と「生成AI活用術」という二つのテーマでパネルディスカッションを行いました。「研究留学」のセッションでは、内田和希さん、川又理樹さん、曽宮正晴さん、竹内七海さんの4名にパネリストとしてご登壇いただき、ご自身の留学経験を共有していただきました。「生成AI活用術」のセッションでは、曽宮正晴さんと小坂唯心さんにご登壇いただきました。日常的な用途から、タンパク質デザインなどの研究用途まで、幅広い用途での生成AIの活用法を共有できたのではないかと思います。

ランチョンセミナー2日目

2日目のランチョンセミナーでは、株式会社大塚製薬の藤峰慶徳様からご講演いただきました。社内でのCIL部門の立ち上げ秘話や、製品紹介、ご自身のキャリアの中で経験など貴重なお話をしていただきました。

表彰式・閉会式・写真撮影

表彰式
 

1日目のポスター発表の投票結果から各ポスター賞が授与されました。

【最優秀発表賞】

  • 矢原 匠人 様

【優秀発表賞】

  • 西河 佑馬 様
  • 吉野 明道 様
  • 長谷 彩沙 様
  • 金子 悠哉 様

【ライトニングトーク賞】

  • 古閑 友紀 様
  • 内田 和希 様

【敢闘賞】

  • 千田 小春 アリシア 様
  • 久須美 莉子 様
  • 及川 陽香 様

【優秀討論賞】

  • TAN PEI YU 様
  • 井上 宙夢 様

閉会式
 

蟹江先生からご挨拶と若手会総会のご案内をいただきました。

次回実行委員長の小坂先生から、ご挨拶をいただきました。最後に実行委員長の中谷先生からお礼を申し上げ、閉会とさせていただきました。

最後に集合写真を撮影しました。

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生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナー2025
第二部:小中高生企画

第二部は、7月6日(日)14:00~17:30に、第一部の夕食会場である Alba HOTEL&Glamping のいとはん食堂にて開催されました。おかげさまをもちまして福岡県内から60名の小中高生およびその保護者に御参加をいただきました。

サイエンスセミナー

第二部では、若手研究者による小中高校生向けのサイエンスセミナーを実施しました。講師は中谷航太先生、白石大智先生、白石千瑳先生の3名の若手研究者が務め、小中高校生に対して科学研究の重要性を分かりやすく説明しました。また、大学に入学することがゴールではなく、研究を通じて人類の未来の創造に貢献することこそが真のゴールであることを伝えました。参加した生徒の皆さんには、研究の難しさや面白さを肌で感じてもらい、大学で研究することの魅力が少しでも伝われば幸いです。そして、この中から将来の科学を担う人材が育っていくことを期待しています。

交流会

ビュッフェ形式で新鮮な刺身やお寿司、ステーキなどをホテルにご準備いただき、食事をしつつ、小中高生との交流を行いました。積極性のある学生との交流は、若手研究者にとっても刺激になったと思います。

写真撮影・閉会式

最後に、写真撮影を行いました。

謝辞

本セミナーの開催にあたり、多大なるご支援を賜りました以下の学会および財団の皆様に、心より御礼申し上げます。

<学会・財団>

公益社団法人 日本生物工学会本部、公益社団法人 日本生物工学会九州支部、公益財団法人 テルモ生命科学財団、公益財団法人 中辻創智社、公益財団法人 加藤バイオサイエンス振興財団、公益財団法人 サントリー生命科学財団

また、セミナー協賛、ブース出展、広告掲載、ならびに心温まる物品のご提供など、多岐にわたるご支援を賜りました多数の企業の皆様に深く御礼申し上げます。皆様のご支援なくして、本セミナーの成功はありませんでした。

【セミナー協賛】

  • 株式会社大塚製薬(+ブース協賛)
  • エーエムアール株式会社(+ブース協賛)
  • かずさDNA研究所
  • 島津製作所

【ブース協賛】

  • 株式会社ワイエムシィ
  • マルハニチロ株式会社
  • 住友化学株式会社
  • 株式会社レゾナック・テクノサービス
  • 株式会社リガク
  • 株式会社テクノスルガ・ラボ

【広告協賛】

  • ブルカージャパン株式会社
  • 正晃株式会社
  • 株式会社ビーフォース
  • 日本ウォーターズ株式会社
  • 大陽日酸株式会社
  • 日産化学株式会社
  • 株式会社ダイセル
  • 三井情報株式会社
  • 株式会社ジーンネット
  • サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
  • ジーエルサイエンス株式会社
  • 株式会社エービー・サイエックス
  • 株式会社tayo

【物品協賛】

  • アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社
  • ホテルオークラ福岡
  • 森永乳業九州株式会社
  • キッコーマン株式会社
  • 霧島酒造株式会社
  • 株式会社tayo
  • 株式会社喜多屋
  • サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社
  • Alba Hotel&Glamping

さらに、個人としてご寄付を賜りました山戸俊幸様、中谷航太様に、この場を借りて篤く御礼申し上げます。

ご多忙の中、貴重なご講演を快くお引き受けくださいました講師の先生方、きめ細やかなお心遣いで会場のお世話をしてくださいましたスタッフの皆様、そして開催の機会を与え、力強くサポートしてくださいました役員の先生方に心より感謝申し上げます。最後に、全国よりお集まりいただきました参加者の皆様、誠にありがとうございました。本セミナーをきっかけに、皆様の研究と交流の輪がさらに広がることを心より祈念しております。

来年もまた、皆様とセミナーにてお会いできることを楽しみにしております。

生物工学若手研究者の集い夏のセミナー2025 実行委員一同

<社会人委員>

中谷 航太(九大/新潟大:実行委員長)
池上 康寛(九大:副実行委員長/会場)
樋口 裕次郎(九大:会場/協賛)鈴木 研志(九大:会場/LT編集)
田代 幸寛(九大:アドバイザー)
佐藤 康史(旭川医大:監事/相談役/会計)
高野 力(北大:プログラム統括/会計)
元根 啓佑(阪大:プログラム統括)
山口 祐希(阪大:協賛)
小坂 唯心(阪大:広報)
谷口 赳夫(阪大:懇親会/会計)
村山 拳午(山梨大:講演/懇親会)
油屋 駿介(HUグループ中央研究所:技術/相談役)
谷口 百優(島津製作所:プログラム統括/要旨集)
中野 洋介(アサヒビール株式会社:講演)
石川 絢野(マルホ株式会社:ポスター・表彰)

<学生委員>

内田 和希(九大:プログラム学生企画/ポスター・表彰)
長谷 彩沙(九大:プログラム学生企画/協賛)
折田 兼成(九大:プログラム学生企画/広報)
加藤 大志(名城大:プログラム学生企画/プログラム統括)
釣上 竜河(名城大:プログラム学生企画/全体補助)

主催:生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナー2025 実行委員会

共催:公益社団法人 日本生物工学会 九州支部

後援:公益社団法人 日本生物工学会
   公益財団法人 福岡観光コンベンションビューロー(使用承諾期2024/12/27-2025/7/6)  
   福岡県教育委員会(第二部)、九州大学大学院農学研究院

 

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