Published by 学会事務局 on 26 5月 2025

【ご挨拶】100年先も輝く生物工学会の基盤を築く – 清水 浩

第25代日本生物工学会会長清水浩

第25代会長
清水 浩

このたび、2025年度より日本生物工学会第 25代の会長を拝命することとなりました大阪大学情報科学研究科バイオ情報工学専攻の清水浩です。私が本会に最初に参加したのは大学院生の大会の時でした。熱い議論に感銘したのを覚えています。以来、35年あまり私の研究人生は本会活動がその中心にあります。微力ではございますが、副会長の青柳秀紀先生(筑波大学)、安原貴臣先生(アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社)をはじめ強力な理事メンバーとともに学会の発展に努めたいと思います。

本会は、2022年に100周年を迎え、多くの皆様のお力添えを持ちまして無事100周年記念事業を終えました。改めて心よりお礼申し上げます。本会は1923年に大阪醸造学会として設立され、醗酵工学会を経て日本生物工学会と改名し現在に至っております。100周年記念誌に記されているように醸造に端を発し現在は生物工学の中心学会としての地位を築いています。次の100年後も輝く学会であり続けるために活動の継続と発展を進めたいと思います。

英文誌 Journal of Bioscience and Bioengineering(JBB)は 2023年の IFが2.3となり、生物工学分野の先端研究成果を発信する国際誌に発展しました。そのことは、日本の生物工学分野のプレゼンスを世界に示しております。皆様の引き続きの積極的な投稿をお願いします。和文誌はさまざまな特集や企画を通じて、読み応えのある記事を掲載発信し続けています。速報性が重要な情報はホームページへ移し、読み物としての魅力を大きくしたいと思います。

本会の大きな特徴の一つは、産学官の会員が情報交換を行うことにあり、大会や SBJシンポジウム、和文誌企画、さらには研究部会の活動を通じて新規研究分野のコミュニティの形成、活性化を支援したいと考えています。100周年を機に韓国生物工学会(KSBB)や台湾生物工学会(BEST)のみならず、ASEAN諸国の生物工学関連学会とも交流が始まりました。今後も大会の国際性など運営方法を議論していきます。

2025 年は改正公益法人法が施行されます。2011年公益法人として認可されて以来その趣旨に沿って着実な活動を行っており、公益事業としての活動や財政基盤の安定化が図られました。この度の改正にともなって外部理事・外部監事の任用など、より公正で開かれた学会として活動してまいります。

本年は学会事務局の体制が変化する時期でもあります。事務局長の定年退職をはじめ事務員が数年の間に異動するため、新たな事務局長、事務員を迎えました。また、これと同時期に会員情報管理システムや大会運営システムの更新などにも取り組み各種活動の効率化を図っています。このような取組みは本部のみでは達成できませんが、すでに各支部のご理解も得て着手しております。今後も本部と支部が協力し、皆様の活動が行いやすくなるインフラを整え、本部・支部を問わず快適な運営につながっていければと考えています。人やシステムが変わる時期にあたり、ひと時ご不便が生じる可能性がありますが、皆様の温かいご支援をお願いします。

100年後の生物工学会はどのように発展しているでしょうか。現在の地球規模の問題や医療、健康、食糧などの社会課題を乗り越えるため、生物工学は日本や世界を支えるキーテクノロジーの一つとして期待されています。基礎および応用研究において分野の垣根を越えて AI や情報、分析科学、ナノテクノロジー、ロボティクスなどなど、さまざまな分野との融合が起こりつつあります。イノベーションは分野どうしの境界で生まれ、発展するとも言われています。これらを生み出す源泉は会員皆様の中にあり、学会内外の分野とのネットワーク形成にあると思います。本会が生物工学分野の魅力のある学会であり続けられますよう、尽力したいと思います。会員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2025年5月
日本生物工学会会長
清水 浩

⇒歴代会長・副会長

 

【歴代会長挨拶】

【生物工学会誌 巻頭言】

►生物工学会誌 –『巻頭言』一覧はこちら

Published by 学会事務局 on 19 6月 2023

【ご挨拶】新会長を拝命して – 秦 洋二(第24代会長)

秦 洋二会長(2023年6月)

第24代会長
秦 洋二

2023 年度より、日本生物工学会会長を拝命することになりました月桂冠株式会社の秦洋二です。初めて民間企業所属の学会長となることに不安があることは事実ですが、清水浩先生(大阪大学)、青柳秀紀先生(筑波大学)という 2 人のアカデミアの副会長とともに学会発展に貢献していく所存です。学会員各位のご理解とご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【創立100周年記念事業について】
2022年は学会創立100年に当たり、福﨑前会長のもと多くの記念事業を行うことができました。10月17日には千里ライフサイエンスセンターにおいて記念式典、受賞講演、創立100周年記念シンポジウムを開催いたしました。コロナ禍の中、当初予定していた会員が一同に集まる式典はできませんでしたが、ハイブリッド開催によって多くの会員と周年事業を共有できたと思います。その他にも記念誌『日本生物工学会100年史』『ひらくひらくバイオの世界(英語版)』などさまざまな記念発刊も行うこともできました。このような100周年記念事業を行うにあたり、非常に多数の個人、団体からご寄付を賜りましたこと、ここに改めて厚く御礼申し上げます。100周年とは歴史の大きな区切りでありますが、次の100年に向けてのスタートでもあります。創立100周年事業で醸成した熱気を保ちつつ、新たな歴史に向けて活動の継続を進めていきます。

【産学官にとって魅力ある学会】
創立当初より生物工学会は積極的に産学連携が進められており、これまでにも多くの連携成果を残すことができました。ただ近年は産業側の会員数や年次大会の発表の減少が顕著になっており、産側の学会離れが危惧されています。ただ、年次大会には産学官の多くの参加者が講演を聴講するなど、学会が発信する情報の魅力が見劣りしているわけではありません。産学官いずれの分野においても魅力ある学会を目指すには、年次大会の活性化を促進することと研究部会活動の継続的発展だと考えています。これまで学会が果たしてきた産学官の交流の場に多くの会員が集うような仕組みを作っていきたいと考えます。P.F.ドラッカーによれば、イノベーションとは「新しく創造した価値を顧客に提供する」とされています。単なる発見、発明に留まらず、社会実装による価値提供が必要です。まさしく生物工学会がその推進力となり、学会が関係する分野のイノベーション創出に貢献できるよう努めていきたいと考えます。

【ポストコロナに向けた新しい学会のスタイル】
我々は新型コロナウイルス感染拡大によって、多くの行動制限を受け、不自由な思いをしました。学会活動も同様に、年次大会が中止またはリモート開催になるなど大きな影響を受けました。本年はコロナウイルス感染が収束に向かい、コロナ禍前の状況に戻りつつあります。ただ我々はコロナ禍で苦しい思いをしただけでなく、多くのことを学びました。学会のスタイルもオンラインなどのデジタル技術を普通に使用できるようになりました。このデジタル技術の普及は、時間や場所を選ばない新たな学会活動を可能にするものであります。今年は名古屋にて対面方式の年次大会が復活し、昨年できなかった100周年記念祝賀会を実施します。
このようなコロナ禍前のスタイルを復活させるだけでなく、ポストコロナにおける新たな学会活動を模索し、会員の皆様の満足度を高める努力をいたします。

学会活動の目的は、当該学問分野の発展、普及と研究者、技術者の育成であると考えています。そのためには、なによりも会員同士のコミュニケーションが重要です。多様な分野の研究者、技術者が生物工学会というプラットフォーム上に集い、闊達な議論をすることが重要です。これからも多くの会員に学会活動に参加していただき、会員間でのコミュニケーションをさらに深めていただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2023年6月
日本生物工学会会長
秦 洋二

⇒歴代会長・副会長

Published by 学会事務局 on 01 6月 2021

【ご挨拶】新会長を拝命して – 福﨑 英一郎(第23代会長)

福﨑英一郎会長(2021年6月)2021年度より、日本生物工学会会長を拝命することになりました大阪大学大学院工学研究科の福﨑英一郎です。思い起こせば、大学院学生だった1984年に日本生物工学会の前身である日本醱酵工学会で口頭発表させていただいたことが当学会との出会いでした。それから数えて37年間お世話になり続け、御恩のある本会が、2022年には創立100周年という節目の時を迎えます。めぐり合わせに感謝するとともに、恩返しのために粉骨砕身努力する所存です。

2年前、副会長を拝命したときには、まったく想像もしなかったコロナウイルス禍に我々は直面しています。これまでとはまったく違った学会の舵取りが求められます。コロナ禍の一年で、我々は、ヒトとヒトとが触れあえる距離で対面して議論することが如何に大切だったかを改めて思い知りました。昨年の東北大会が開催できなったときの喪失感は未だに記憶に残っています。ただ、昨年の今頃は、2021年になったらコロナ禍も沈静し、対面での学会活動ができることを期待しつつ、一年我慢すれば、もとの対面学会活動が再開できると信じていました。しかしながら、状況は混迷を極め、現状がいつまで続くかはまったく不透明です。ただ、嘆いていても何も生まれません。コロナ禍というピンチをチャンスに変えることを第一義に考えて、Withコロナならではの学会運営を模索していきたいと思います。まず、Withコロナで発展したオンライン会議のリテラシーを最大限活用することにより、全国の支部活動を全国の学会員の皆様と共有することができると考えています。まずは、小職自らが全国の支部会合にお邪魔させていただき、皆さんと意見交換を行いたいと思っております。また、機会があれば15の研究部会および若手会の研究部会間のシナジー効果の最大化を図りたいと思います。お許しをいただければ、各研究部会のオンライン会合に出席させていただき、意見交換できれば幸いです。オンライン会議の一般化は、海外との垣根を低くしたと言えます。今後、海外学会との交流を積極的に深めていきたいと思っています。

学会の科学的アクティビティの発信は学会の重要なミッションです。幸いなことに、和文誌、英文誌ともに、歴代編集委員長のご努力のおかげでバイオエンジニアリングの定期出版物としての重要な地位を占めるにいたっております。それらのさらなる発展を進めるとともに、ホームページの充実、SNSの活用などを進め、きめ細かい学会活動の発信に努めたいと思っております。100周年記念事業の中でも和文誌、英文誌は重要な位置を占めます。各編集委員長のご努力に期待すること大です。産学連携は生物工学会のお家芸ともいえる大切な活動です。ただ、Withコロナの中で活動を続けるために、なんらかの変革が求められると自覚しております。ピンチをチャンスに変えて、この機会に飛躍したいと考えております。

生物工学という学問分野の発展のためには、若手のリクルートが必須です。すでに研究室に配属された学部4年生や大学院学生についてはある程度のレベルで啓発活動が実施されていますが、高校生や中学生に対しては十分とは言えません。Withコロナの中で、中高生へのアウトリーチについても模索していきたいと思います。

最近、SDGsという言葉を聞く機会が増えました。SDGsの実現は我が国の使命です。生物工学という学問をコアコンピタンスとして、SDGsの実現を目指したバックキャスト的アプローチに必要なキーテクノロジーを提供できる学会を目指して、頑張れる体制を作りたいと思います。

日本生物工学会は生物工学に関わる産官学の学会員のための梁山泊です。学会員の学会員による学会員のための学会にしたいと思っております。理事をはじめとした学会員各位、事務職員の皆様方のご協力を心から期待する所存です。

2021年6月
日本生物工学会会長
福﨑 英一郎

 

⇒歴代会長・副会長

 

Published by 学会事務局 on 20 6月 2019

【ご挨拶】髙木 昌宏(第22代会長)

新会長を拝命して

高木昌宏会長(2019年6月)


この度、日本生物工学会の第22代会長を拝命いたしました、北陸先端科学技術大学院大学の髙木昌宏でございます。伝統ある本学会の会長ということで、その責任の重さを痛感しております。不安もございますが、副会長の福崎英一郎先生(大阪大学)、秦 洋二氏(月桂冠)、ならびに理事・役員、そして会員の皆様の御助力により、2022年(令和4年)の創立100周年記念行事に向けて、一層の学問領域の活性化と会員サービスの向上に励みたいと思います。
よろしくお願い申し上げます。


以下に、私が会長就任に際して思うところを述べさせていただきます。

【取り組むべき課題:アクションプラン】
第19代会長の園元謙二先生が提唱された3つのアクションプラン、つまり、

  1. 学会を維持運営するための財政基盤の確保、
  2. 公益目的事業の企画・明確化と寄付文化の醸成、
  3. 年代・職種が異なる会員間の交流促進、

について、私の在職期間中も粛々と実行したいと考えています。特に力を入れたいのは、産業界との連携と学会誌の充実です。産学連携委員会のアンケート調査でも、産業界から「学会活動を、広報の場として活用したい」との声が寄せられており、そのご要望にお応えしたいと考えております。また、ユニークな企画で好評を頂いている和文誌、インパクトファクターが2を越えた英文誌についても、さらなる充実に向けて知恵を絞りたいと考えております。
 

【生物工学会らしさ:密度の濃い人間関係】
上述したプランは、他学会とも共通する課題です。すると「生物工学会らしさとは?」について、常に意識する必要があります。私どもの学会の歴史を振り返りますと、その発端は、学生の企画に基づいた「同窓会組織」でした。その後、醗酵工学会へと発展するまでの歴史は、第5代会長の照井堯造先生のお言葉を借りれば、「学会組織としての健全な発達への要望と、同窓会組織への郷愁」の葛藤の歴史であったそうです。我々の学会に独特の雰囲気を感じておられる向きもあるそうですが、その理由を考えるに、「上意下達ではない同窓会的組織」であった設立の思想が、脈々と受け継がれているからです。会員の皆様が相互に、他学会とは異なった密度の濃い人間関係を構築しつつ、忌憚のないご意見・ご要望を、学会に向けて発信していただければと思います。この雰囲気こそが、生物工学会らしさであり、発展のエネルギーです。
 

【学理と技術:応用基礎研究のすすめ】
成熟期を迎えた日本の科学技術において、学理と技術の関係については、再認識する必要があると考えています。物理学者の上田良二先生は、次のように述べています。「日本人の多くは、学理を応用して技術を開発するものだと思っている。しかし、ガリレイは望遠鏡を改良したが、幾何光学を勉強してからその仕事をしたのではない。蒸気機関の発達の後を追って熱力学が確立されたことはよく知られている。日本人は、学理を生むような技術を開発したり、技術のなかから学理を育てた経験に乏しいから、教壇に立つ先生まで、学理が先で技術が後と思い込んでいる。」つまり、応用研究や実用化が先に進んでから、基礎研究分野が生まれる「イノベーション」を仕掛けることがもっとできるはずです。科学史を紐解くと、黒体輻射が量子力学を生み、アスピリンが脂質メディエーター研究を生んだように、「技術が先で学理が後」となる「応用基礎研究」について意識した研究テーマ設定について、より真剣に考える必要があると思います。
 

「バイオテクノロジー」は、典型的な学際領域であり、さまざまな知識と手法が相互に対峙・融合して発達が遂げられています。創造的研究とは、結局は学問と学問が出会う境界領域で生まれています。そして、それはとりもなおさず人と人の出会いに端を発するのです。工学、農学、医学、薬学などの学問分野、さらには、産官学など、異なった種々の価値観を相互に、そして積極的に、刺激、対峙、融合させ、会員の皆様が、イノベーション創出に関わるための一助となることが、学会活動の大切な使命です。

2019年6月
日本生物工学会会長
髙木 昌宏

⇒歴代会長・副会長

 

Published by 学会事務局 on 17 6月 2017

【会長挨拶】木野 邦器(第21代会長)

新会長を拝命して

木野邦器会長(2017年6月)この度、日本生物工学会会長として選任されました早稲田大学理工学術院の木野邦器でございます。醸造・発酵工業のパイオニアとして世界のバイオ産業を牽引してきた我が国にあって、100年に近い歴史を誇る伝統ある日本生物工学会の会長を拝命致しますことは、誠に光栄なことではありますが、その使命と重責を担うことに身の引き締まる思いがします。高木昌宏、川面克行の両副会長をはじめ、理事、支部長、代議員、そして会員皆様のお力添えをいただきながら、先人達の築いてこられた本会の一層の発展に尽力して参りたいと存じます。

本会は、2011年に飯島元会長のもとで公益法人に移行し、2012年には創立90周年記念事業が原島元会長のもとで成功裏に執り行われ、創立100周年に向けて新たな決意が表明されました。園元元会長は、学会運営体制の強化を図りつつ、今後10年間の行動目標として、1. 財政基盤の確保と健全化、2. 公益事業の明確化と寄付文化の醸成、3. 会員間の交流促進と連携を掲げ、在任中の2年間で具体的な7つの課題を明示して強いリーダーシップを発揮され重点的に取り組まれました。五味前会長は、そのアクションプランを達成すべく各支部との連携を強化されるなど大いに尽力され、とくに懸案であった財政基盤の確保と職員の常勤化を果たされました。これは、今後の学会発展にとって不可欠で重要な成果です。

創立90周年から数えて丁度5年目の折り返しの時期に会長を拝命した私の使命は、前執行部の方針や改革を引き継ぎ、とくに園元元会長が掲げられた行動目標を着実に実践し、創立100周年に向けて本会が大きく飛躍するための基盤をつくることであると考えています。公益法人における学会運営の財政面での安定化を果たすための事業計画や仕組みを作り、その基盤の上に、本会の特徴ある学術研究活動を国際的に展開させ、学術の先進化と社会実装に向けた産学官の新たな連携や取組みを推進し、生物工学の次世代を担う世界で戦える若手人材の育成を進めていきたいと考えています。そのために、行動目標の達成に向けてそれぞれが果たすべき役割と課題をあらためて明確にし、しかも横連携を図れる柔軟性と効率的な展開を目指して、PDCAサイクルを意識した運用を徹底していきたいと考えています。

今世紀は、人口増大に伴う食料問題、地下資源の乱用、炭酸ガス排出増大に伴う環境変動といった地球規模での喫緊の課題が山積しており、私たちは持続可能な社会の確立に向けたさまざまなニーズに対応する必要があります。国連が2015年に持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)として掲げた17の目標のうち、10項目以上でバイオテクノロジーが貢献できるとされています。我が国においても、健康・医療をはじめ、モノつくり技術や環境・エネルギー、農業・食料供給などの面で課題は多く、本会の担うべき役割は大きいと感じています。

ゲノム解析や編集技術、オーミックス研究やビッグデータ処理技術など、合成生物学をはじめ生体情報工学や細胞工学などの分野で著しい技術開発がなされており、それらはさらに革新的なイノベーションを引き起こすと考えられますが、一方で、これからの新たなモノつくり技術において生物工学の可能性が問われています。新たな潮流の中で、本会や生物工学分野にとっては今がチャンスと捉えるべきで、会員の皆様が、夢の実現に向けて知恵と勇気を持って果敢に挑戦できるアクティビティーの高い学会にしていきたいと思っています。

生物工学会誌の巻頭言の見出しである「随縁随意」は、私が和文誌編集委員長であった時に考えた四文字熟語の造語です。特定の専門分野の研究や学術団体であっても、それを維持・推進するのは“人”だと考えています。異なる背景と価値観を持つ多様な年齢層の人々が、生物工学を拠り所として集まり、交流し、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮することで新たな価値の創出やイノベーションが実現するものと考えています。

会員の皆様には、本会をそれぞれのブラッシュアップの場と捉えていただき、一方で、充実感を味わえる学会を目指したいと思っています。個人会員、学生委員、団体会員、賛助会員の皆様におかれましては、あらためて絶大なるご協力とご鞭撻を賜りますよう切にお願い申し上げ、会長就任の挨拶とさせていただきます。

2017年6月
日本生物工学会会長
木野邦器

⇒歴代会長・副会長

Published by 学会事務局 on 12 6月 2015

【会長挨拶】五味 勝也(第20代会長)

新会長を拝命して

日本生物工学会 会長 五味勝也この度、日本生物工学会会長という大任を拝することになりました東北大学大学院農学研究科の五味勝也でございます。あらためて私と生物工学会との関わりについて思い起こしますと、大学院修士課程修了後に国税庁醸造試験所に配属になった30数年前に、大阪の日本生命中之島研修所における年次大会に参加するため本会(当時は日本醗酵工学会)に入会してからのお付き合いになります。中之島研修所は宿泊所も兼ねており、自分の部屋から直接会場に行くことができて非常に便利だったのを懐かしく思い出します。その当時はまだ大会での発表数や会員数もそれほど多くなかったかと思いますが、その後のバイオテクノロジー関連の研究分野の拡大に伴い、年次大会の発表数は750件、会員数は一般会員・学生会員合わせて3000名を越えるような大きな学会に発展してきました。

このような発展を遂げ、設立後90有余年の伝統を誇る由緒ある学会の会長の役を担うとなると、私自身がその重責に耐えられるかどうか不安に感じることも事実です。ただ、大役を任された以上気を引き締めて今後の2年間の学会運営に一生懸命努力していきたいと思っています。当然のことながら、私一人の力でなし得ることは限られており、強力な理事や支部長などの執行部の方々のご協力を仰ぎながら、また代議員をはじめ会員の皆様のお力添えをいただきながら、本会の発展のためにお役に立てればと思っております。

さて、生物工学会は4年ほど前に飯島元会長とその執行部のご尽力により公益法人化への移行がスムーズに完了致しました。また、原島元会長のもと創立90周年記念事業が成功裡に執り行われ、100周年に向けて順調なスタートを切ることができました。しかし、生物工学会を取り巻く諸般の情勢は決して楽観視できるものではありません。そのような状況に鑑み、過去2年間においては園元前会長の強力なリーダーシップのもと、10年間の行動目標が掲げられました。そこには、3つのアクションプラン(1. 学会を維持運営するための財政基盤の確保(財政健全化)、2. 公益目的事業の企画・明確化と寄付文化の醸成(公益と寄付)、3. 年代・職種が異なる会員間の交流促進(交流・連携))を基本として、7つの具体的な重点項目(1. 斬新な学会活動の企画、2. 産学連携の推進、3. 地域社会への貢献、4. 会員サービスと事業活動の積極的な広報、5. 国際交流、国際展開の推進、6. バイオ産業を担う学生の教育活動の推進、7. 若手会員の学会運営への参画促進)が設定されています。前執行部ではその達成目標に向かって鋭意取り組んでまいりました。特に、喫緊の課題としてあげられたアクションプラン1の学会の財政健全化に関しては、会議関係費や委員手当ての削減、英文誌の掲載料の値上げなど大ナタが振るわれ、当面の財政基盤の確保はできたものと考えています。ただ、学会活動のさらなる活性化を考えると予算の拡充措置を考えるべき項目があります。加えて、将来的な状況変化が見通しにくいこともあり、今後も不断の検討が必要と思っています。

私は園元前会長の執行部でサポート役の副会長として、これらの課題に取り組んでまいりました。しかし、2年間という短期間で必ずしもすべての課題について目標を達成できたというわけではありません。このような中で会長を拝命することになった私の大きな使命の一つは、前会長の方針を引き継ぎ、設定された課題解決を目指して尽力することにより、100周年さらには次の時代に向かって、学会を発展させるための基盤を固めることではないかと認識しています。したがって新執行部として新たな基本方針を掲げることは敢えてせず、今後の2年間は前執行部で取り上げた3つのアクションプランと7つの重点検討項目について、残された目標の達成に向けて引き続き一生懸命取り組んでいく所存です。このような取組みを効率的かつ効果的に実施するため、前執行部で取り入れた新運営体制(庶務・会計の一体化、各職務複数制の理事による職務の継続性と負担軽減など)のもとで活発な議論を重ねながら、それぞれのミッションを果たせるように努力したいと考えています。

最後に重ねてのお願いで申し訳ありませんが、会員の皆様方や事務局の皆様のご協力なしでは生物工学会の発展は到底考えられません。皆様のご協力とご鞭撻を心よりお願い申し上げますとともに、忌憚のないご意見ご助言をいただければありがたく存じます。

2015年6月
日本生物工学会会長
五味 勝也

⇒歴代会長・副会長

Published by 学会事務局 on 17 6月 2013

【会長挨拶】園元 謙二(第19代会長)

新会長を拝命して

会長 園元謙二この度、日本生物工学会会長に就任いたしました九州大学大学院農学研究院の園元謙二でございます。90年を超える伝統を誇る由緒ある日本生物工学会の会長の重責を拝命し、身の引き締まる思いがいたします。理事、支部長、代議員をはじめ会員の皆様のお力添えをいただき、本会の発展に微力ながらお役に立ちたいと思っております。

昨年(2012年)、原島 俊前会長の指揮の下、学会創立90周年記念事業が成功裏に終わりました。90周年を迎えられたのは、ひとえに先達の弛まぬ努力のおかげであると思います。本事業の終了報告については学会のHPに掲載されています(https://www.sbj.or.jp/about/about_90th_anniversary_message.html)。ここでは、まずは100周年に向けて確固とした礎を築いていくために、90周年記念事業の中で興味深いものを振り返り、100周年への俯瞰的行動目標を述べたいと思います。

さまざまな90周年事業の中で、記念出版の一つである『ひらく、ひらく「バイオの世界」―14歳からの生物工学入門』は全国のスーパーサイエンスハイスクールおよび県庁所在地の県立図書館などに寄贈され、公益法人として一つのエポックとなりました。残りの事業、特に継続事業のための基金を有効活用することは本会の一層の充実と発展、会員の学術活動に貢献するために重要です。たとえば、生物工学学生優秀賞(飛翔賞)は、大学院博士後期課程(あるいは同等な課程)に進学(予定)の学生会員の中から、各支部から推薦された優秀な大学院生に与えられるもので、100周年までに50–60名の受賞者が生まれます。彼らが学生会員の中核として学会を牽引し、さらに博士号取得後、若手正会員として活躍す ることが大いに期待されます。ホットな若手が各会員層と交流し、更なる活性化の一因となることを願っています。このように、今後10年間は90周年記念事業計画が続いていきます。

また、新たなスタートの際、まずは本会が置かれている状態を俯瞰し、足元を見据えた行動目標が必須と思われます。たとえば、日本は世界に例を見ない人口の減少と高齢化が始まっています。2012年では60歳以上で働いている人(就業者数)の全就業者に占める割合は約5人に1人となりました。一方、若い世代の働き手の割合が2007年ごろから減っており、今後はこの減少率がさらに高まる見通しです。中でも15–29歳の若手はこの10年間で約25%減少しました。シニア層の活用は日本経済の活性化や再生のために重要な課題ですが、65歳を過ぎると多くのシニアが引退します。すなわち、日本の就業者数の減少はもはや避けられません。本会の正会員数もこれに呼応するように2007年の約2500名から漸減しており、他の学会でも同様の傾向が見受けられます。一方、学生会員数は年次大会前後の入退会のサイクルがあるものの増加傾向にあります。これは学会の事業活動収入の内、大きな割合を占める会費収入に大きな影響を与えます。また、他の収入である英文誌出版補助金などもいつまでも継続する保証はないことも直視すべきです。会員データベースを詳細に分析し、対策を練る必要があります。

飯島信司元会長の執行部のご尽力で本会は2011年4月1日、公益社団法人に移行しました。これは、公益法人制度改革に関連する法令(2008年12月1日施行)に対応したものです。公益社団法人として満たすべき主たる要件は、公益目的事業比率が全支出の50%以上であることです。本会の場合、公益目的事業とは学術及び科学技術の振興を目的とする事業で、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すべきものですが、要は、受益の機会が一般に開かれているかどうかを基本としています。この2年間の本会の事業を精査し、学会として社会にどのように貢献しているのか検証するとともに、広く社会や産業界での足場を強化するよい機会としたいと願っています。その意味で、前述した90周年事業の記念出版は中山 亨理事(生物工学教育担当)はじめ関係各位のご尽力の賜物です。また、公益社団法人であることにより、個人、法人からの寄付の受入について税法上の優遇があることは、今後の学会の運営にとって大きな利点であります。いずれにせよ、今後、具体的な戦略・戦術が必要と感じています。

このような背景から、今後10年間の行動目標を以下の3つに絞りたいと思います。ぜひご意見など賜りたいと思います。

  1. 学会を維持運営するための財政基盤の確保(財政健全化)
  2. 公益目的事業の企画・明確化と寄付文化の醸成(公益と寄付)
  3. 年代・職種が異なる会員間の交流促進(交流・連携)

さらに、今期2年間の具体的な課題を立てる必要があります。これまでの執行部のさまざまな改革の基本方針と成果の上に、新たな将来設計を立てるのは必然です。たとえば、過去2年間の原島前会長の執行部(私は副会長を拝命)では、3つの運営目標、「学から産へ」「シニアから若手へ」「国内からアジアへ、そして世界へ」を設け、着実な学会発展を築いてきました。これらの運営目標も歴代の執行部の未解決課題を俯瞰し、選択しながらまとめあげたものです。今期は以下のような7つの課題に重点的に取り組みたいと考えています。

  1. 斬新な学会活動の企画(本部と支部の連携も強化)
  2. 産学連携の推進(産と学による新たなバイオ産業創成)
  3. 地域社会への貢献(地域連携シンポジウムの企画)
  4. 会員サービスと事業活動の積極的な広報(電子情報化のさらなる推進、和文誌の充実)
  5. 国際交流、国際展開の推進(プレゼンスの向上、英文誌の充実)
  6. バイオ産業を担う学生の教育活動の推進(産学連携などとも協力した人材教育)
  7. 若手会員の学会運営への参画促進(理事補佐制度などを活用)

以上、3アクション+7テーマ(3+7)について述べてきました。このような取組みを行うために、幸いにも五味勝也(東北大学)、倉橋 修(味の素)両副会長をはじめ強力な理事の方々に就任いただきました。HPの組織図をご覧ください(https://www.sbj.or.jp/about/about_organization.html)。これは原島前会長が課題解決のために最近とりまとめたもので、歴代の執行部の改革の積み重ねの歴史を窺い知ることもできます。理事補佐制度も昨年度より開始し、「生物工学を志向する若い世代の育成」の一貫としています。また、今期は、庶務・会計を一体にした職制を新設し、各副会長の下に配置して即応・柔軟な運営ができるようにしました。さらに、各職務2人制の理事とし、職務の継続性と理事の負担軽減を見据えた組織としました。組織を動かすのは人ですが、理事職は見返りのないボランティア活動です。理事の方にも達成感と充実感を味わっていただき、かつ会員の皆様全員の共感を生むような学会運営を心がけたいと思います。会員の皆様だけでなく事務局の皆様のご協力をお願い申し上げますとともに、忌憚のないご意見ご助言をお願い申し上げます。

最後に、最近、学会とは何かを考えることが多くなりました。若い頃の学会の思い出は、さまざまな「触発」を受け、精神的充実感のような魔物に魅了されていたような気がします。個性豊かな同期・先輩・先生方に囲まれ、楽しい思い出が尽きません。学会の役割について、年代や所属する組織などによって異なる考えがあってもよいと思います。むしろその多様で異質な考えが交わり合って、新しい活力となるように願っています。ヘテロであればこそ発展が望めると思っています。また、最近はどの組織でも若手育成が叫ばれ若手に期待が集まる傾向でそれは大切なことですが、シニアもミドルも人材育成という使命だけにとらわれず、自らも高揚できるようにもっとがんばってもらいたい!若い人にはない経験という熟練の技をぜひ若手と交流しながら伝え、互いに異質であってもいろいろな夢を描いていってほしい。そのような出会いの環境を提供するのが執行部の役割のひとつとも思っています。杯を交わし合い、ヘテロな人たちが自由に発言し意見交換できるすばらしい学会を目指していきたいと願っています。

2013年6月
日本生物工学会会長
園元 謙二
 

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Published by 学会事務局 on 25 6月 2009

【会長挨拶】飯島 信司(第17代会長)

新会長を拝命して

会長 飯島信司

この度、日本生物工学会会長に就任いたしました名古屋大学大学院工学研究科の飯島信司です。80年を超える伝統を誇る由緒ある日本生物工学会の会長の重責を拝命し、身の引き締まる思いが致します。理事、支部長、評議員をはじめ会員の皆様のお力添えをいただき、本会の発展に微力ながらお役に立ちたいと思っております。

過去2年間は、塩谷会長のリーダーシップのもと英文誌のオンライン化と発行に必要な経費の削減という大改革がなされ、学会の財政難という大問題もひとまず決着致しました。しかしながら、生物工学会をめぐる諸般の事情はひきつづき大変厳しくまた流動的であるのも事実です。特に公益法人制度の改革により私ども学会も一般法人となるか、あるいは公益法人に移行するかの選択をせまられております。前理事会、アドバイザー会議においても、この際公益法人へ移行すべきではないかというご意見を頂戴しており、その準備を進めて参りたいと思っております。移行までの期限は5年間ですが、大至急公益法人としての新たなる学会の姿を明らかにし、会員の皆様のご判断を仰ぐ所存でございます。

さて過去を振り返れば歴代の会長、先達のご努力により学会のアイデンティティーの確立、電子情報化、英文誌、和文誌の改革がなされ、それらが結実して現在の学会があると考えております。今後もこのような先人のご努力を継承しつつ、また会員の皆様のご意向はもちろんのこと、アドバイザー会議でのご意見、さらに前期理事会活性化ワーキンググループの答申などをふまえ改革を進めてまいりたいと思います。これらのご意見を拝見いたしますと、会費を払っても十分満足できると思って頂ける会員サービスや、これなら積極的に寄付をして学会活動をサポートしようとお考えになるような開かれた社会活動など、学会の将来像の確立がきわめて重要と考えます。これは学会の存在意義や、法人化で問題となっている公共性、さらに学会を維持運営するための財政基盤にかかわる問題とも言えます。

一方、歴代編集委員長のご尽力で、英文誌JBBは海外からの投稿も年に250を超え、インパクトファクターも1.8に近づくなど国際誌として飛躍して参りました。また近隣諸国では、アジアを束ねるバイオテクノロジーの連合を作る動きなども見られます。経済的にも発展著しいアジアにおいて、我学会が生物工学をどのようにリードしていくかも大至急方策をたてなければなりません。このような観点から言えば、1)会員の皆様にさらに大きな存在意義を認めて頂ける学会になる。2)アジアをリードする学会になる。ということが本学会のめざすべき、いわば学会活動の両輪と言えるかもしれません。これらは5年や10年で結論がでる問題でもありませんが、公益法人化を良いチャンスとして議論を開始できればと考えております。

以上のような視点より次のような活動について重点的に推し進めて参りたいと考えております。
 

公益法人化をにらんで

 1. 新法人法に対応した学会組織、会計処理の変更
 2. 公益性の高い学会活動の模索
 3. 学会行事の見直し、研究部会、支部活動の充実

会員サービスの向上、学会運営の透明性の向上をめざして

 4 .電子情報化のさらなる推進と和文誌の充実
 5. 産学官連携の強化
 6. JABEE活動の推進

世界を見据えた学会のプレゼンスを高めるため

 7. 英文誌の充実
 8. アジア諸国の関連学会との連携、海外会員のあり方の検討

このような方針を掲げても、また目標のどれをとっても実現に困難が予想されますが、幸いにも役員選考委員会では強力な理事の方々を選んでいただいておりますので、少々安心しております。産学連携・企画の総括は奥村康副会長、将来問題検討については原島俊副会長に担当していただきます。また、誌面の都合上、各理事の担当の詳細は割愛させていただきますが、編集、国際化、会計、庶務など、強力な理事の方々に担当していただいておりますし、支部長の先生方にも熱心に活動していただいております。なるべく早期に、それぞれの活動方針についてはアクションプランを決め、活動を展開する予定です。

最後に一言、生物工学会は皆様の学会です。会員の皆様、事務局の皆様のご協力なくしては一歩も前に進みません。皆様のご協力を重ねてお願い申し上げますと共に、忌憚のないご意見ご助言をお願い申し上げます。

2009年6月
日本生物工学会会長
飯島信司


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Published by 学会事務局 on 28 7月 2008

学会について

学会紹介パンフレット(PDF 4.8MB)

 

生物工学のロゴ

sbj_logo


曲線の部分はDNA(遺伝子)を表しており、
バイオサイエンスを象徴しています。
もう一つは撹拌翼を表しており、
バイオエンジニアリングを象徴しています。

日本生物工学会100年史

日本生物工学会100年史

会員限定公開(PDF 51.6MB)

Published by 学会事務局 on 28 7月 2008

【会長挨拶】塩谷 捨明(第16代会長)

president Shioya本学会は1923年大阪で日本醸造学会として誕生し、爾来さまざまな変遷を経て、1992年現在の学会名、日本生物工学会となりました。学会としては古い歴史を持ち、2002年には創立80周年記念を祝うことができました。最初の学会名が示す通り、当初はアルコールや味噌醤油などの発酵食品を対象としていましたが、わが国のバイオ産業の発展につれ、微生物生産のみらず酵素、生理活性物質、植物、動物細胞や環境バイオテクノロジーなどが学会の守備範囲となってきました。21世紀、バイオの時代になるとポストゲノム、ナノバイオ、再生医療や組織培養を含む医薬バイオ、なども当学会の対象となってきています。

一方、地域的な広がりに目を転じてみますと、大阪の地を発祥としました学会は今や6支部からなる全国規模の学会となりました。公称会員数4000人の中規模学会です。そして、アジア諸国の諸学会との連携も進んでおり、特に韓国(KSBB)やタイとは友好的な交流を長年にわたって続けております。

当学会では、2種類の学術誌を刊行しています。和文誌「生物工学会誌」は、日本語による論文もさることながら、研究の背景や最近のトレンドなど情報交換誌としての役目を十分果たしていると自負しております。また、英文誌Journal of Bioscience and Bioengineering (JBB)は、最近impact factor(IF)が1.78と上昇し、この分野の主要な学術雑誌として認知され始めたことは喜ばしい限りです。また関係者のご努力により、2009年から投稿・査読から最終稿入稿まで完全オンライン化します。時代にマッチした学会誌出版への努力をこれからも続けてまいります。

学会のもう一つの大事な使命は、年次大会にあると思っております。同じ分野を志す科学者工学者が同じ土俵で発表会を通じて情報交換し、議論し、懇親を深めるのが年次大会の大事な役割です。毎年600件余りの発表に、約1500名の参加者があり、中規模学会としては盛会と思っております。今後も多くの皆様が集まって年会が開けるようサポートしていきたいと思っております。

その他、支部活動、研究会活動、産学連携の場の設定など、学会として大事な活動もあります。
私はこれらの活動を支えるために全力を注ぐ決心です。学会は会員の皆様のための組織です。皆様におかれましても、学会活動への積極的なご参加と、活動に対する忌憚のないご意見をお寄せ頂きますようお願いします。

2008年
日本生物工学会会長
塩谷 捨明

 

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