Published by 学会事務局 on 26 5月 2025

【ご挨拶】100年先も輝く生物工学会の基盤を築く – 清水 浩

第25代日本生物工学会会長清水浩

第25代会長
清水 浩

このたび、2025年度より日本生物工学会第 25代の会長を拝命することとなりました大阪大学情報科学研究科バイオ情報工学専攻の清水浩です。私が本会に最初に参加したのは大学院生の大会の時でした。熱い議論に感銘したのを覚えています。以来、35年あまり私の研究人生は本会活動がその中心にあります。微力ではございますが、副会長の青柳秀紀先生(筑波大学)、安原貴臣先生(アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社)をはじめ強力な理事メンバーとともに学会の発展に努めたいと思います。

本会は、2022年に100周年を迎え、多くの皆様のお力添えを持ちまして無事100周年記念事業を終えました。改めて心よりお礼申し上げます。本会は1923年に大阪醸造学会として設立され、醗酵工学会を経て日本生物工学会と改名し現在に至っております。100周年記念誌に記されているように醸造に端を発し現在は生物工学の中心学会としての地位を築いています。次の100年後も輝く学会であり続けるために活動の継続と発展を進めたいと思います。

英文誌 Journal of Bioscience and Bioengineering(JBB)は 2023年の IFが2.3となり、生物工学分野の先端研究成果を発信する国際誌に発展しました。そのことは、日本の生物工学分野のプレゼンスを世界に示しております。皆様の引き続きの積極的な投稿をお願いします。和文誌はさまざまな特集や企画を通じて、読み応えのある記事を掲載発信し続けています。速報性が重要な情報はホームページへ移し、読み物としての魅力を大きくしたいと思います。

本会の大きな特徴の一つは、産学官の会員が情報交換を行うことにあり、大会や SBJシンポジウム、和文誌企画、さらには研究部会の活動を通じて新規研究分野のコミュニティの形成、活性化を支援したいと考えています。100周年を機に韓国生物工学会(KSBB)や台湾生物工学会(BEST)のみならず、ASEAN諸国の生物工学関連学会とも交流が始まりました。今後も大会の国際性など運営方法を議論していきます。

2025 年は改正公益法人法が施行されます。2011年公益法人として認可されて以来その趣旨に沿って着実な活動を行っており、公益事業としての活動や財政基盤の安定化が図られました。この度の改正にともなって外部理事・外部監事の任用など、より公正で開かれた学会として活動してまいります。

本年は学会事務局の体制が変化する時期でもあります。事務局長の定年退職をはじめ事務員が数年の間に異動するため、新たな事務局長、事務員を迎えました。また、これと同時期に会員情報管理システムや大会運営システムの更新などにも取り組み各種活動の効率化を図っています。このような取組みは本部のみでは達成できませんが、すでに各支部のご理解も得て着手しております。今後も本部と支部が協力し、皆様の活動が行いやすくなるインフラを整え、本部・支部を問わず快適な運営につながっていければと考えています。人やシステムが変わる時期にあたり、ひと時ご不便が生じる可能性がありますが、皆様の温かいご支援をお願いします。

100年後の生物工学会はどのように発展しているでしょうか。現在の地球規模の問題や医療、健康、食糧などの社会課題を乗り越えるため、生物工学は日本や世界を支えるキーテクノロジーの一つとして期待されています。基礎および応用研究において分野の垣根を越えて AI や情報、分析科学、ナノテクノロジー、ロボティクスなどなど、さまざまな分野との融合が起こりつつあります。イノベーションは分野どうしの境界で生まれ、発展するとも言われています。これらを生み出す源泉は会員皆様の中にあり、学会内外の分野とのネットワーク形成にあると思います。本会が生物工学分野の魅力のある学会であり続けられますよう、尽力したいと思います。会員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2025年5月
日本生物工学会会長
清水 浩

 

【歴代会長挨拶】

Published by 学会事務局 on 19 6月 2023

【ご挨拶】新会長を拝命して – 秦 洋二

秦 洋二会長(2023年6月)

第24代会長
秦 洋二

2023 年度より、日本生物工学会会長を拝命することになりました月桂冠株式会社の秦洋二です。初めて民間企業所属の学会長となることに不安があることは事実ですが、清水浩先生(大阪大学)、青柳秀紀先生(筑波大学)という 2 人のアカデミアの副会長とともに学会発展に貢献していく所存です。学会員各位のご理解とご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【創立100周年記念事業について】
2022年は学会創立100年に当たり、福﨑前会長のもと多くの記念事業を行うことができました。10月17日には千里ライフサイエンスセンターにおいて記念式典、受賞講演、創立100周年記念シンポジウムを開催いたしました。コロナ禍の中、当初予定していた会員が一同に集まる式典はできませんでしたが、ハイブリッド開催によって多くの会員と周年事業を共有できたと思います。その他にも記念誌『日本生物工学会100年史』『ひらくひらくバイオの世界(英語版)』などさまざまな記念発刊も行うこともできました。このような100周年記念事業を行うにあたり、非常に多数の個人、団体からご寄付を賜りましたこと、ここに改めて厚く御礼申し上げます。100周年とは歴史の大きな区切りでありますが、次の100年に向けてのスタートでもあります。創立100周年事業で醸成した熱気を保ちつつ、新たな歴史に向けて活動の継続を進めていきます。

【産学官にとって魅力ある学会】
創立当初より生物工学会は積極的に産学連携が進められており、これまでにも多くの連携成果を残すことができました。ただ近年は産業側の会員数や年次大会の発表の減少が顕著になっており、産側の学会離れが危惧されています。ただ、年次大会には産学官の多くの参加者が講演を聴講するなど、学会が発信する情報の魅力が見劣りしているわけではありません。産学官いずれの分野においても魅力ある学会を目指すには、年次大会の活性化を促進することと研究部会活動の継続的発展だと考えています。これまで学会が果たしてきた産学官の交流の場に多くの会員が集うような仕組みを作っていきたいと考えます。P.F.ドラッカーによれば、イノベーションとは「新しく創造した価値を顧客に提供する」とされています。単なる発見、発明に留まらず、社会実装による価値提供が必要です。まさしく生物工学会がその推進力となり、学会が関係する分野のイノベーション創出に貢献できるよう努めていきたいと考えます。

【ポストコロナに向けた新しい学会のスタイル】
我々は新型コロナウイルス感染拡大によって、多くの行動制限を受け、不自由な思いをしました。学会活動も同様に、年次大会が中止またはリモート開催になるなど大きな影響を受けました。本年はコロナウイルス感染が収束に向かい、コロナ禍前の状況に戻りつつあります。ただ我々はコロナ禍で苦しい思いをしただけでなく、多くのことを学びました。学会のスタイルもオンラインなどのデジタル技術を普通に使用できるようになりました。このデジタル技術の普及は、時間や場所を選ばない新たな学会活動を可能にするものであります。今年は名古屋にて対面方式の年次大会が復活し、昨年できなかった100周年記念祝賀会を実施します。
このようなコロナ禍前のスタイルを復活させるだけでなく、ポストコロナにおける新たな学会活動を模索し、会員の皆様の満足度を高める努力をいたします。

学会活動の目的は、当該学問分野の発展、普及と研究者、技術者の育成であると考えています。そのためには、なによりも会員同士のコミュニケーションが重要です。多様な分野の研究者、技術者が生物工学会というプラットフォーム上に集い、闊達な議論をすることが重要です。これからも多くの会員に学会活動に参加していただき、会員間でのコミュニケーションをさらに深めていただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2023年6月
日本生物工学会会長
秦 洋二

 

【歴代会長挨拶】

 

【生物工学会誌 巻頭言】

►生物工学会誌 –『巻頭言』一覧はこちら

Published by 学会事務局 on 20 4月 2021

生物工学会誌 –『巻頭言 “随縁随意”』第87巻(2009年)~第98巻(2020年)

こちらでは生物工学会誌第87巻(2009年)~第98巻(2020年)の『巻頭言 ”随縁随意”』に掲載された記事がご覧いただけます。

98 (2020)|97 (2019)|96 (2018)|95 (2017)|94 (2016)|93) (2015)|92 (2014)|
91 (2013)|90 (2012)|89 (2011)|88 (2010)|87 (2009)|

第98巻(2020)
12号コロナ禍の頃
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清水 浩
11号横の「糸」の大切さ
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大利 徹
10号COVID-19の後
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児島 宏之
9号漫文
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川瀬 雅也
8号人類が身に付けた3つの特殊能力
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今井 泰彦
7号科学者にとってのwell-being
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片倉 啓雄
6号日本のお酒を世界へ
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後藤 奈美
5号ノーベル賞受賞者から香る研究観
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田口 精一
4号バイオ戦略2019
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横田 篤
3号人工知能と工学の可能性
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三宅 淳
2号研究の巡り合わせ
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柏木 豊
1号仮説を証明する
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髙木 昌宏
第97巻(2019)
12号アカデミアによる工学研究
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高木 睦
11号実証研究を考える
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本多 裕之
10号「My hunch is ..(. 私の勘だと……)」または「私のゴーストがそう囁く……」
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加藤 純一
9号微生物の学名と分類学が基盤となるもの
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鈴木 健一朗
8号日本酒が面白い
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西村 顕
7号複雑な微生物系に挑む
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金川 貴博
6号就任挨拶新会長を拝命して
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髙木 昌宏
(会長)
BioscienceとBioengineeringを両輪として
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神谷 典穂
(英文誌編集委員長)
令和時代の生物工学会誌
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岡澤 敦司
(和文誌編集委員長)
5号卒業研究は楽しく
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太田 明徳
4号バイオものづくりは面白い
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宇多川 隆
3号生物工学会として温故知新
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秦 洋二
2号あなたの研究の顧客は誰?
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栗木 隆
1号いま,大学が求められていること
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山本 秀策
第96巻(2018)
12号次世代を担う若き研究者にエールを込めて!
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倉根 隆一郎
11号企業研究者と大学教員
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堀内 淳一
10号運か才能か
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中山 亨
9号時と生物工学
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朴 龍洙
8号独走的研究のススメ
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養王田正文
7号SGUと学会のグローバル化
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伊藤 伸哉
6号『生物工学会誌』の益々の発展を~和文誌あれこれ~
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稲垣 賢二
5号異業種交流会への期待
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日野 資弘
4号オールドバイオの楽しみ
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下飯 仁
3号新しい研究テーマを立ち上げる
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谷口 正之
2号泥臭い研究とスマートな研究
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辻 明彦
1号技術立国日本における学会の使命と人財の育成
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木野 邦器
第95巻(2017)
12号学問ノススメ
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安部 淳一
11号Vietnam奮闘記
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播磨 武
10号科学の進歩と科学者の貢献
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山田 隆
9号企業はもっと発表を,学会の活性化
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浅田 雅宣
8号Delft Schoolに想うこと
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駒形 和男
7号幸せの無意識的共感のために
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遠藤 銀朗
6号<就任挨拶>新会長を拝命して
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木野 邦器
5号アジア若手国際交流のすすめ
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長棟 輝行
4号生物工学とバイオテクノロジー
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山本 憲二
3号オープンイノベーションに向けて
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清水 範夫
2号研究と経営
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近藤 恭一
1号手なづけられるか人工知能(AI)
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川面 克行
第94巻(2016)
12号楊楓林教授との国際交流
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古川 憲治
11号非公開のオープンイノベーションとは
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広常 正人
10号研究における個性
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根来 誠司
9号思えば遠くへ来たもんだ
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松井 和彦
8号「そうぞう」閑話
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田谷 正仁
7号科学技術立国と大学―ベンチャー経験者からの思い―
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高見澤一裕
6号「世界を視野に地域から始めよう」の研究者人生
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水光 正仁
5号発酵放談
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勝亦 瞭一
4号「ものまもり」バイオへの期待
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土戸 哲明
3号創薬に関する研究に期待
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芳本 忠
2号新たな学際分野の創出と組織基盤強化
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福田 秀樹
1号年次大会の盛況を見て感じたこと
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五味 勝也
第93巻(2015)
12号ある研究者の履歴書から
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中西 一弘
11号地球環境問題に対して我が国はどこまで貢献できる?
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菅 健一
10号発見と発明に関する怪談
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浅野 泰久
9号外国人留学生の育成と支援
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高木 博史
8号酵素阻害剤とくすり
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森原 和之
7号微生物学の発展と広がりの中で思うこと
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松下 一信
6号<就任挨拶>新会長を拝命して
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五味 勝也
5号喜んでばかりはいられない?
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正田 誠
4号これから研究室を立ち上げる方へ
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関口 順一
3号国立大学改革について思うこと
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江崎 信芳
2号糖質制限とミトコンドリア
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永井 史郎
1号伝統は革新の連続~原点を見つめ,能動的に変化していこう~
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倉橋 修
第92巻(2014)
12号言いにくいこと
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大竹 久夫
11号予想を超えた結果に出会うとき
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久松 眞
10号なぜ「休眠遺伝子」なのか?―趣味の研究,道楽の研究―
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越智 幸三
9号研究者マインドの確立のために
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河合富佐子
8号企業研究者として
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恒川 博
7号研究者,技術者に大切と思うこと
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藤井 隆夫
6号歴史は繰り返す?
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山根 恒夫
5号ヒトの遺伝子を解析して感じたこと
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高木 敦子
4号アンチエイジングと発酵β-グルカン
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岡部 満康
3号次世代を担う個性(=独創性)豊かな人材育成を夢見て
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小埜 和久
2号産学官連携におけるコーディネーター(人)の役割
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西野 徳三
1号夢を紡ぐ、夢を繋ぐ
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園元 謙二
第91巻(2013)
12号産学官連携と技術者視点
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下田 雅彦
11号学生に技術士を勧めよう
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浅野 行蔵
10号国公立大学における教育研究費に想う
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林 英雄
9号われわれはタンパク質を理解しているだろうか
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大島 泰郎
8号「科学」と「技術」
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高木 昌宏
7号医療イノベーションと知財教育
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石埜 正穂
6号就任あいさつ新会長を拝命して
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園元 謙二
会員が欲する情報の発信をめざして
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藤原 伸介
5号中国での共同ラボに託した夢の実現に向けて
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木田 建次
4号実中研の歴史と未来
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野村 龍太
3号新しい時代への飛躍
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五十嵐 泰夫
2号オープン・イノベーションの本格化を目指して
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塚本 芳昭
1号生物工学会100周年に向かって
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柳 謙三
第90巻(2012)
12号時代の目
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奥田 徹
11号連携のすすめ
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島田 裕司
10号無から有,組織,分からせる
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中西 透
9号大学の第三の使命
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杉山 政則
8号京都大学の産学連携について御存じでしょうか?
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牧野 圭祐
7号天からの贈り物
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石川 陽一
6号ものづくりに想うこと
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坂口 正明
5号3.11からの再出発における科学の役目
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林 清
4号イノベーションの起こし方
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松永 是
3号分野融合の難しさと易しさ
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湯元 昇
2号研究者の楽しみ
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木村 光
1号年頭所感ー学会創立90周年を迎えてー
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原島 俊
第89巻(2011)
12号バイオマス利用研究のすゝめ
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鮫島 正浩
11号信心の師となるも心を師とするなかれ
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神尾 好是
10号秋入学に想う
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棟方 正信
9号生物の多様性と若者への期待
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大宮 邦雄
8号若者よ,Hazardous Journeyを目指せ!
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今中 忠行
7号“大学教授生態論”の序文
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緒方 靖哉
6号就任挨拶-学会創立90 周年から 100 周年への飛躍を目指して
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原島 俊
5号時代の変化に応じた国際学術交流を
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石崎 文彬
4号健忘症に対するささやかな抵抗
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谷口 誠
3号バイオマス活用の促進に向けて
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兒玉 徹
2号麹菌と溶姫
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北本 勝ひこ
1号若手研究者・技術者の人材育成のついて思うこと
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奥村 康
第88巻(2010)
12号事業仕分けと世界一
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土佐 哲也
11号生物と工学のギャップを埋める“生命の神秘”
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阪井 康能
10号微生物増殖学のすすめ
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福井 作蔵
9号日本生物工学会 うたかたの記
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山田 靖宙
8号未来技術の予測と検証のすすめ
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古川 謙介
7号研究者よ,名を残せ
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依田 幸司
6号新しい産業革命の渦中にあって
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植田 充美
5号E-バイオの幕開け
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石井正治
4号アジアにおける今後の国際交流活動のあり方
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小林 猛
3号「科学者」からの提言
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室岡 義勝
2号テロワールと生物工学
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清水 健一
1号日本生物工学会のゆくえ
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飯島 信司
第87巻(2009)
12号パステルカラーの遺伝子組換え
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伊藤 清
11号日本の技術の国際競争力―東南アジアにおける環境ビジネスを例に―
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吉田 敏臣
10号魅力が失われつつある職業研究者についての独り言
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鎌形 洋一
9号断想:五十年は一昔
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左右田 健次
8号水に生きるバイオ-微妙な感性-
PDFダウンロード
佐々木 健
7号日本微生物学連盟の設立とIUMS2011札幌
PDFダウンロード
冨田 房男
6号<就任挨拶>新会長を拝命して 
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飯島 信司
放線菌って,どんな生物?
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宮道 慎二
5号環境・バイオマス研究のあらたな取り組みへ
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長島 實
4号チェンジ―英文誌アジアにおける生物工学分野のトップジャーナルへ!!
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大竹 久夫
3号不確実にこそ新たな可能性あり
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森永 康
2号和菌洋才
PDFダウンロード
加藤 暢夫
1号若き生物工学研究者に期待する
PDFダウンロード
手柴 貞夫

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生物工学会誌 –『巻頭言 “随縁随意”』
過去号掲載記事(記事種別)一覧へ
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Published by 学会事務局 on 25 1月 2015

【随縁随意】伝統は革新の連続~原点を見つめ、能動的に変化していこう~ - 倉橋 修

生物工学会誌 第93巻 第1号
倉橋 修

新年明けましておめでとうございます。会員の皆様をはじめ、これまで学会活動にご参画、ご協力頂きました多くの皆様に、改めて御礼を申し上げます。

園元会長が2013年に掲げられた活動方針、重点課題(3アクション+7テーマ:学会HP参照)は、学会を取り巻く社会の環境変化に対応しつつ、創立100周年、さらにはその先に向けた学会の基盤作りを目指すものです。そのためには、学会および学会員がこれまでの考え方や行動を能動的に変えていくことが求められています。

少々古いデータになりますが、日本経済大学の後藤俊夫教授が2009年に発表された調査結果によると、日本には創業200年以上の歴史を有し、老舗と呼ばれる会社が3937社も存在するということです。最も長い歴史を有する会社は神社や寺を建立する金剛組で、なんと西暦578年に創業しています。世界各国の調査結果も示されており、2位以下は、ドイツ1850社、英国467社、フランス376社と続き、アジアでは中国75社、インド6社、韓国1社とのことです。米国企業は平均30年の短い寿命で衰亡していると言われていますが、老舗の多寡は必ずしも各国・各地域の歴史の長さとは相関しないように思えます。我国に老舗と呼ばれる会社が突出して多いのは、その地政学的な特性に加え、独自の文化、自然、風土、思想などが色濃く反映された結果ではないでしょうか。

日本のバイオインダストリーも例外でなく、長い歴史を誇る会社が多々存在します。醤油製造を生業としたヒゲタ醤油は1616年に、ヤマサ醤油は1645年、酒造りを生業とする月桂冠は1637年、大関は1711年、酢の醸造を生業とするマルカン酢は1649年に創業しています。我国の伝統的な発酵食品の会社以外でも、武田薬品工業は和漢薬の仲買商店として1781年に創業し、アサヒビールとサントリーは1889年に、キリンビールは1907年に創業しています。筆者の属する味の素は1909年に創業しており、100年を超える歴史を有していますが、各社ともバイオテクノロジーをコアコンピタンスとして経営の多角化を図りながら、事業規模を拡大しています。このように長期間に亘り存続できたのは、時代の変化を機敏に捉えつつ、新たな社会的価値、お客様価値を創造し続けてきたからこそであり、伝統は革新の連続であると言われる所以です。

東洋には自然に生かされているという思想があり、日本のバイオインダストリーは自然に謙虚に対峙し、自社の基盤に外からの異質な文化を鷹揚に取り込み、混ぜ合わせ、発酵、熟成させて自らの基盤を発展、拡大し、魅力的なものに変えてきたからこそ長期間に亘り、存続し得たのではないでしょうか。

さて、日本生物工学会は2022年に創立100周年を迎えます。本学会創立の端緒となった1910年の大阪高等工業学校醸造会の設立から数えれば、既に100年を超える歴史があり、国内の学会の中では伝統ある学会と言えます。1923年に大阪醸造学会として設立されて以来、1962年には日本醗酵工学会に、1992年には日本生物工学会へと学会名称が変更されると同時に学会の基盤を発展、拡大してきました。大阪醸造学会から日本醗酵工学会への改称は、同窓会的性格を併せ持つ学会が純粋学術団体へと大きく変貌を遂げるものでしたが、先輩諸氏が学会会員の声に真摯に向き合い、リスクを取って変革にチャレンジされたことが今日の発展に繋がっているものと推測します。日本生物工学会は、これからも原点を見つめながら、学会のステークホルダーの声に耳を傾け、能動的に自らを変えていくことが必要であると考えます。

一方で、決して変えてはならないものもあります。日本生物工学会の定款にはその目的が明確に示されていますが、筆者は日本生物工学会とは、日本独自の基盤(文化、自然、風土)に根ざし、生物を研究開発対象として実学(役に立つ知、技と新たな社会的価値の創造)を志す研究者が集い、学会本部・支部役員と会員の皆様、特に次世代を担う若手会員の皆様との双方向コミュニケーションによる切磋琢磨の場と考えています。これこそが本学会の変えてはならない原点ではないでしょうか。

日本生物工学会が、これからも社会的価値を創造する学会として発展し続ける事を願いつつ、年頭のご挨拶といたします。


著者紹介  味の素(株)(常務執行役員)
     バイオ・ファイン事業本部(副事業本部長)、バイオ・ファイン研究所(所長)

 

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